自分で言うのも何ですけど、ナザワ、今はいい家に住んでいますよ。で、そういうことを褒めてくれる人もいます。でもそういうステータスって本当に嬉しいのかなって。ナザワよ、お前は何が嬉しいの?ホワットドゥーユーライク?いつも自問自答ですよ。顔がいいのもそう。生まれてきた時に備わっていた強みで人の価値って決まるの?そんなわけないじゃない。そういうものにあぐらをかいているとね、とことん堕落するのよ…人間って。

2014-07-20 150

「リードヴォーカル」から「リードローカル」へ

―――先ほどまでの話を総括すると、ナザワさんは全然今の稲沢には満足していないと。今の稲沢はE.NAZAWAには「刺さっていない」。稲沢は何もない「フツーの街」だと。でもナザワさんは稲沢を愛していますよね?正直なところ、ナザワさんは稲沢の何を愛しているんですか?だって、何もないフツーの街なんですよね?

ナザワ:嬉しいねえ~。すごくいい質問。じゃあもっと言いましょうか?たとえば、僕の兄は学生時代、県外に住んでいたんだけど、自己紹介で出身地は名古屋だと言っていた。でも当然、名古屋市出身の人には「稲沢だろ?そんな田舎と一緒にするなよ」みたいなことを言われたりするわけ(笑)。ただ、兄としては当時、愛知といっても広いし、インパクトがないのでわかりにくいかなと、無意識のうちに身近な大都市をあげていたと。

―――自分の出身地を聞かれた時に、つい説明しやすい大都市の話をしてしまうということは、どこの地域にでもありそうな話ですよね。そういう、説明しやすい街の誇りみたいなものを稲沢でも発掘したいということでしょうか。

ナザワ:確かに、自分の住む街を誇りたいという気持ちは、皆どこかに持っていてもいいんじゃないかと思っていますよ。でもね、ここ重要よ。発掘しようとすることはいいことなんだけど、極端な話、発掘して何も出てこなくたっていい(笑)。

―――え~!出てこなかったら意味ないじゃないですか(笑)。

ナザワ:そう思うでしょ?ところがね、「出てくるか、出てこないか」は本質的な問題じゃないの。むしろ下手に出てこない方がいい場合だってある。今ね、稲沢に少しでもナザワの功績があるとすれば、そこに誰よりも早く気が付いたということかもしれない。

―――仮に発掘して、出てきませんでしたと。じゃあどうするか?ということを考える方が大切だと。

ナザワ:そういうことですよ。人間にたとえてみましょうか。たとえば生まれが良くても、それは自分の努力の賜物じゃない。自分の価値って、自分で築き上げていくものでしょ?実際に金持ちだったり、イケメンだったりすることを得意に感じている人はいるかもしれないけど、それ自体が持つ価値ってどの程度のものなんだろうって。それって面白い?感動できる?僕はどうしてもね、そこを疑うことから始めちゃうんですよ。

―――僕は正直、羨ましいと思うこともありますが(笑)。

ナザワ:わかりますよ。ナザワだってラクしたいもん(笑)。でもね、その隣で、少しずつでも自分なりの価値を作ってきている人がいたとすれば、やっぱりそっちのほうがリスペクトの対象になりやすいんじゃない?そりゃその方が、成功するのは何倍も難しいですよ。でも、そういうことを真摯に考えて生きている人は結局ハッピーだし、結果として何も産まなかったとしても、実は価値があるんですよね。これ、意味わかる?

―――すみません、わかりません!

ナザワ:OK(笑)。たとえば、自分で言うのも何ですけど、ナザワ、今はいい家に住んでいますよ。で、そういうことを褒めてくれる人もいます。でもそういうステータスって本当に嬉しいのかなって。ナザワよ、お前は何が嬉しいの?ホワットドゥーユーライク?いつも自問自答ですよ。顔がいいのもそう。生まれてきた時に備わっていた強みで人の価値って決まるの?そんなわけないじゃない。そういうものにあぐらをかいているとね、とことん堕落するのよ…人間って。

―――ステータスに安住することなく、価値を自ら作り出そうとすることが重要なんだと。その方法論は、音楽も、まちづくりも違いはないんだと…。

ナザワ:振り返ってみるとね、世の中で威張っている人たち。もうこの際、蓋を開けてみましょうよ。実は元々持っているもので勝負していることが多いんじゃないですか?でも、やっぱりゼロから生み出すヤツだけがモノホンなんですよ。世界にはゴロゴロいます、そういう人たちが。そのためにはやっぱりね、成果を残してナンボ。成果が伴わない努力、これはオナニーだと言われても仕方がないんだと。努力の過程に価値がないとは思わないし、結果としてオナニーになっちゃうのは仕方ないことかもしれないけど、プロがいつまでもオナニーじゃ、どうしようもないですよこれは。プロは相手を気持ちよくしてナンボ。結局、ここがブレてる人が多い。だから上手くいかないんですよ。

―――さっき「発掘して、何も出てこなくてもいい」と仰られたのは、つまり稲沢のような「フツーの街」には、逆にゼロから何かを生み出すチャンスが転がってるってことなんですね。確かに京都みたいな歴史的な観光地だと、規制も多い分、逆に新しいことに取り組めないような雰囲気も感じます。それがわかれば、自分たちの街でやるべきことが見えてくるという。

ナザワ:結局ね、外に答えを求めても仕方がないんじゃないですか?自分の足元から何ができるかを、まずは考え抜いてみることですよね。ワールドカップになればサッカーに浮かれて、オリンピックになれば「感動をありがとう」みたいな、こういうメディア主導の熱気とは逆のスタンスが必要なんですよ。もちろんサッカーもオリンピックもそれ自体は素晴らしいわけですけど、ギャラリーの入り込み方が異常で、見ているこっちが冷めてしまうみたいなことってありますよね。ホントにそんなに好きなのかよって(笑)。こういう価値の画一化圧力みたいな流れの中で、喜びとか感動とかが定型化していくのはツマラナイ。だからね、ナザワはあえて今、それの逆を行くんですよ。で、もちろんやるなら一番乗りで行く。それが「リード・ローカル」の意味です。

―――MEGANTEでリードヴォーカルを担当してきたE.NAZAWAが次に目指すポジションは「リード・ローカル」だと。

ナザワ:まあそのためには、情報のあり方っていうのも課題としてありますけどね。これだけコミュニケーションの方法が増えてきたのに、ネット空間のコンテンツが多すぎて、結局テレビとか新聞とか従来の情報源に回帰しているようにも見えますよね。「新人類」だとか「個性」だとか、みんなの思いや考え方が画一化するのは悪だってずっと言ってきたけど、結局似たような概念が生まれては消えていっているだけ。

―――今は情報が多すぎて、整理や編集がされないまま垂れ流しになっている印象ですね。

ナザワ:でしょう?一時期、「今やネットが世の中のすべてを表現できているから、新しい方向性を導きます」みたいな風潮…変な希望がありましたよね?世の中的に。あれ、全部ウソだから。誰かが言ったんです、自分たちにとって都合のいいウソを。で、結局正解が選べないから、最近、ちょっと前の問題意識に一周回って帰ってきちゃってる。出戻りだけに、今さら浮気もできないから、より依存度を高めてね(笑)。

―――情報の洪水にすっかり呑まれてしまって、失敗しながらでも自分で考えようとする人がどんどん減ってきているような気がします。

ナザワ:そういう視点で今の世の中を見渡すと、むしろ滑稽さが増しているようにも見えてくるわけで。毒にも薬にもならない「ジョーシキ」が昔以上に無難な形で同調圧力をかけてくる中で、何をやったら世の中が、国が地域がもっと面白くなるのかを探していくってのは、今後、ナザワの重要な活動テーマになっていくんじゃないかな。(続く)
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