人類が缶コーヒーを愛飲するようになって、既に半世紀が過ぎようとしていた。北緯25度から南緯25度までの熱帯・亜熱帯に集中している通称「コーヒーベルト」。人々はそこで豆を摘み、育て、そして死んでいった。
00年代中盤、主要生産国であるブラジルから最も遠いここ日本では健康志向が高まり、缶コーヒー業界全体を巻き込んだ『微糖戦争』が勃発した。以後わずか3年あまりの戦いで、国内の缶コーヒーメーカーは総生産の半分を甘味料入りに至らしめた。人々はみずからのカフェイン好きに恐怖した…。
缶珈琲クロニクル表紙3

今さら聞けない!「缶コーヒーの歴史」

■発祥
缶コーヒーは日本発祥。1965年(昭和40年)に島根県浜田市のコーヒー店主・三浦義武によって開発された『ミラ・コーヒー』が世界初の缶コーヒーと言われています(参照:島根県:しまねがいちばん)。

■GEORGIAの首位独走
その後、UCC上島珈琲・ダイドードリンコ・ポッカコーポレーションの3メーカーが台頭、「缶コーヒー御三家」と呼ばれるまでに寡占化するものの、1975年に日本コカ・コーラがGEORGIAブランドで参入するや、自販機設置攻勢を後ろ盾にした強力な営業力で瞬く間に業界を席巻、現在まで業界首位の座に君臨する基盤を作りました。

■ビール各社の台頭
また、缶コーヒーの歴史でもう一つの転機となったのは、ビール会社の参入です。
80年代になるとサントリー・キリン・アサヒが相次いで缶コーヒー市場に参入、日本コカ・コーラ同様の自販機ビジネスを展開します。
90年代には各社ブランド名を一新。サントリー「WEST缶コーヒー→BOSS」、キリン「JIVE→FIRE」、アサヒ「J.O.→WONDA」という現在まで続くブランドが確立。豊富な資金に裏付けされた開発力で徐々に売上を伸ばし、各社ともに上記「缶コーヒー御三家」の市場占有率を上回りました。

■JTの参入
2000年に入り、日本たばこ産業(JT)が、キーコーヒーとの共同開発ブランド「Roots」を立ち上げて業界を再び沸かせましたが、すでにメインの販路である自販機設置台数およびコンビニ店舗数は飽和状態になっていることから上位4社の販売網を打ち破るには至っていません。しかし、ビール会社の成功例に漏れず、嗜好品を基盤とした強靭な資金力に加え、たばこ販売を背景としたコンビニとの密な関係という独自ルートをも併せ持つJTは、「御三家」を早々に抜いて現在5位に躍り出る健闘ぶりを見せています。

■第1次微糖戦争
2006年頃からメタボリックシンドロームが話題となったことで健康志向が高まり、「微糖」「無糖」の表記がある缶コーヒーから順に売れていくという現象(本誌はこれを『微糖伝説』と呼んでいます)が起こり始めました。各社が一斉に甘味料入り缶コーヒーの開発競争に走り出すという、缶コーヒー史上かつてない開発ラッシュ『微糖戦争』が勃発したのです。
強豪ひしめく中、この戦争については2005年に発売後わずか2ヶ月半で5000万本を売上げたキリンFIREの大ヒット作「挽きたて工房」の微糖版「挽きたて微糖」が引き続き好成績を残し、にわかに市場を制したかに見えました。

■第2次微糖戦争(糖類ゼロ戦争)
2008年、もともと『微糖戦争』の火付け役となっていたアサヒWONDAが「糖類ゼロ」という新機軸を打ち出し、戦況は新たな局面を迎えることになります(『糖類ゼロ戦争』)。「WONDA ゼロマックス」の登場が『微糖戦争』から続くカロリーオフの流れに更なる拍車をかけることとなり、戦場は熾烈を極めました。ダイエットの必要性を感じない多くの民間人が犠牲となりました。

■現在
2010年、甘味料を享受できない昔ながらの缶コーヒー好き(被災者)を救うべく、上記2つの戦争で後塵を拝していたサントリーBOSSが、ようやく戦争終結に向けた動きに乗り出しました。それは「BOSS シンプルスタイル」で謳われている「甘味料不使用、甘さひかえめ」という第3の選択肢の提示―。戦争で失った心を取り戻そうとする勇気ある決断でした。
そんな中、これまで戦争を静観していた帝王GEORGIAが、日本で一番売れていると言われている王道缶コーヒー「GEORGIA エメラルドマウンテン」の微糖版、通称「エメマン微糖」を引っ提げて突如宣戦布告。「エメマンバトル」と称した与党の総裁選のごとき広告戦略により、いよいよ戦況は膠着状態となっています。


今回の検証条件

今回の特集にあたっては、下記条件に絞ることで対象を30製品に厳選しました。読者の皆さんがギリギリ挑戦できるボリュームとして1日1本、1ヶ月で全て飲み比べてみてはいかがでしょうか(健康管理は各人でお願いいたします)。

■主に5大ブランド製品のみ
2009年時点でのオリコンブランドランキングは、GEORGIA・BOSS・FIRE・WONDA・Rootsの順となっており(参照:oriconグルメ)、今回の特集は主にこの5大ブランドに焦点を当てています。それは、一部のマニアのようにご当地限定の〇〇コーヒーが美味い!と言っても、多忙なカザーナ読者にとって実用性のないことが明らかだったためです。

■誰でもすぐに買いに行ける製品のみ
あくまでも「コンビニ(セブンイレブン・ローソン・ファミリーマート)で買える」「自販機で買える」「東京都内で買える」缶コーヒーを対象に検証しています。理由は上記同様、実用性を重視しているからです。携帯やスマートフォンを片手に、本特集を見ながら飲むべき缶コーヒーを吟味してみてください。

■レギュラーコーヒーのみ
「缶コーヒーというのは毎日1本以上飲む3割ほどのヘビーユーザーが、全売り上げの7割を支えています。その人たちが最も好むのはブラックでも微糖でもなく、ミルク入りのレギュラーコーヒー。これが缶コーヒーの味の王道なんです。糖類をゼロにしても、味が王道から外れては意味がない―(アサヒ飲料マーケティング部コーヒーチームリーダー  小松秀児氏)」(参照:プレジデントロイター「達人のテクニック」)以上のプロの見地にカザーナ編集部は賛同しています。ブラックについては、別の飲み物として除外しました。

■「品名:コーヒー」のみ
品名が「乳飲料」「コーヒー飲料」「清涼飲料」など「コーヒー」以外の物については、別の飲み物として除外しました。

■アイスのみ
公平を期すため、試飲条件を全てアイスに統一しました。そのため、ホットで飲んだ場合の味の変化につきましては一切の責任を負いかねますのでご了承ください。