WEBアイコンイラク駐留米軍による民間人誤射映像やアメリカ外交公電を流出させたウィキリークスと、尖閣ビデオ流出事件のsengoku38。ほぼ同時期に「流出」という共通のキーワードで語られた二つの事件が、相反する世論を形成した理由とは?

全貌ウィキリークス何かのために sengoku38の告白


今さら聞けない!ウィキリークス問題

もう既に各メディア、個人Blog等々で語り尽くされていますが、まずウィキリークス(WikiLeaks)はウェブサイトの一つであり、機密情報の公開を目的とした組織の名称です。

ウィキリークス (WikiLeaks) は、匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイトの一つ。創始者はジュリアン・アサンジ。投稿者の匿名性を維持し、機密情報から投稿者が特定されないようにする努力がなされている。2006年12月に準備が開始され、それから一年以内に120万を超える機密文書をデータベース化している。(出典: Wikipedia日本語版)

最初にこの"お洩らしWiki"なるサイトがネット世間の注目を集めたのは、昨年の春頃のことです。ウィキリークス上に、イラク駐留米軍による2007年の民間人誤射事件(被害者の中にはロイター通信社の記者も含まれていました)の模様が掲載され、全世界へ発信されました。なんと攻撃を加えた様子を含む、軍用ヘリコプターからの映像付きです。映像からは、乾いた無線の音と発砲音、そして弾け飛ぶ人間の図が淡々と映されています。興味ある諸氏はこちらをご参照下さい。 ※一部不適切と思われる場面が含まれます

また昨年11月末、ウィキリークスはアメリカ合衆国の外交機密文書の公開を開始しました。
約25万に上ると見られる公電が徐々に公開され、


・中国政府が検索大手Googleのサーバへの侵入を指示していた
・サウジアラビアの国王様がイランへの攻撃を促す旨、米国政府に働き掛けていた
・シンガポールの高官が日本のことを"The big fat loser(デブの負け犬)"と揶揄していた
・米外務省職員、高官等による各国への悪口が盛りだくさん


などなど、程度の違いこそあれ、物騒な情報が盛り沢山のようです。

海を挟んだここ日本においても他人事ではありません。防衛に関わる機密情報など、公にされてしまうことで私達の生活にマイナスとなる情報も含まれています。

この件を受け、世界各国の反応も様々です。ウィキリークスないし代表者ジュリアン・アサンジ氏を批判する側と擁護する側とに分かれているのですが、日本国内の反応は総じて冷ややかで、どうやらあまり支持者が多いとは言えない状況のようです。(参照:アメリカ外交公電ウィキリークス流出事件 - Wikipedia



今さら聞けない!尖閣ビデオ流出事件

ウィキリークス問題とは別に、日本ではほぼ同時期に似た様なニュースを聞くことになります。ご存じの通り、尖閣ビデオの流出事件です。

尖閣諸島中国漁船衝突事件の発生時に海上保安庁石垣海上保安部が録画し、同庁および那覇地方検察庁が保管していたと思われる映像が海上保安官によってインターネット動画共有サイトYouTubeに公開され流出した事件である。(出典:尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件 - Wikipedia)

当局の調べに対して、sengoku38なる容疑者は以下の様に供述したとされています。

「一人でも多くの人に遠く離れた日本の海で起こっている出来事を見てもらい、一人ひとりが考え判断し、そして行動して欲しかった。」

事件発生後、この映像の公開を巡り日本国政府の対応は揺れ、結局、民主党政権は中国への配慮を優先し、公開しない旨を定めました。

政府の決定に対し、国民の多くが非難の声をあげました。産経通信社が流出事件後に実施した世論調査によると、回答者の9割超が容疑者"sengoku38"の行動を「支持する」と答え、また政府の対応を「評価しない」、「政府は今からでも映像を国民に公開すべき」とも答えました。(参照:【私も言いたい】テーマ「尖閣ビデオ問題」 海保職員、95%が「支持」- MSN産経ニュース)



まとめ…「ゴシップ」と「スクープ」の違い

先の世論調査の結果から、尖閣事件時の映像は、少なくとも日本国内においては大いに待ち望まれていた情報であることが読み取れます。

その一方で、ウィキリークスが今まさに暴かんとしている機密情報はどうでしょうか。どなたか、リビアのカダフィ大佐の性癖と愛人のヘアカラーに興味あるカダフィ・マニアの方はいますでしょうか?

確かに国家公務員であるsengoku38は、本来遵守すべき守秘義務を犯した犯罪者ですから、この点において彼は罰せられるべきでしょう。ただ、彼が発信した情報は間違いなく「スクープ」であり、単なる「ゴシップ」ではありませんでした。この違いが、ウィキリークスと相反する世論を形成した最大の理由と言えそうです。

そもそも「ゴシップ」と「スクープ」の違いとは、公益性の有無にあります。情報の公益性に欠ける「ゴシップ」が大半を占めるウィキリークスに共感できない日本人が多いという事実は、そのまま日本人の国家観に置き換えられるのではないでしょうか。

不正を暴いた正義の告発者か。はたまた、情報漏洩のテロリストか―。ネットメディアの普及と裁判員制度の導入で、この国の英雄と犯罪者は、いよいよ私たち一人一人の捉え方次第になってきたのかもしれません。

mizukawa
みずかわ/1982年生まれ。カザーナ専任ライター。尾張と三河の狭間に住む窓際リーマンは、カイゼンとタイサクの渦の中、今日も元気に胃が痛い。