漫画アイコン戀愛をゲームの樣に樂しむ事に抵抗があつたり、驅引に躊躇ひがあつたりして、異性(に限らないけど)と上手に關はる事が出來ず悶々とした青春を過ごしてゐた若者が強く惹かれた同シリーズも漸く7巻。

イエスタデイをうたって 7 (ヤングジャンプコミックス)リクオとシナ子が御附合ひを始める事になつた訣だから、大きく話が動き始めた。かと言つて、今までの流れに無駄があつた訣でもなく、シナ子が漸く一歩踏み出せる心境に至つた――然うなる迄に此だけの時間を要した訣だ――。

と云ふ訣で附合ひ始めた二人なのだけど、相變らずまつたりムードと言ふか、二人のペースで動いてゐるから良いんだけれども、まどろつこしい事此の上ない。と思ふ。現實離れと云ふか浮世離れと云ふか。其の、恰も欲望に忠實、と云ふ概念が存在しないかの樣な超ストイックな處が良いのだけれども。と云ふか、單に相手に對してと言ふより相手以外(リクオならハル、シナ子なら湧)に對する遠慮が未だ大きいと云ふか何と言ふか。

然う考えるとシナ子は遅くとも着々と前進して行けるけど、リクオは何うなんだらう。

ハルは健在だし、今に至る迄にハルの存在がリクオの中で大きくなつて仕舞つてゐるから、ハルに遠慮してシナ子に對して積極的になり切れない事が今後屡々起きるだらう。あんまり明るい先行きを描けない。

個人的には、ハルの感情の持ち樣がとても好ましい。自分が傷附かないリクオとの距離感を分かりつつも、其の距離を保つてゐてはリクオと今以上の關係を築けないから、距離を縮めようと氣持ちを奮ひ立たせる邊りがとても健氣で人間らしくて好き。多分、此の作品の中で一番人間的な振舞ひをしてゐるのはハルだらう。

餘談だけれども、7巻に至るまでの間隔が長過ぎ。何しろ11年も經つてゐるもの。私が同シリーズを讀み始めてからでも9年近く經つてゐるから、流石に讀者に當時と同じ氣持ちで讀めと言ふのは無理な話だらう。とても勿體無い話なんだけども。冬目景は、一氣讀みした方が良い漫畫家では3指に入る。


稲垣
いながき/1982年3月14日生まれ。其の他略歴として書ける事は特に無い至つて普通の人間。
http://inagaki.exblog.jp/