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「次世代サラリーマンの働く未来を考える」本誌CAZANAでは、社会のさまざまな現象に対してビジネス的(というより「ビジネス的(笑)」)な説明がなされ、記事の中でたくさんのビジネス書が紹介されています。ビジネス書ばかりを読んでいるとこうなる、といういい見本ですね。
もっとも、これらビジネス書を賢明な執筆者諸氏が読んでるとは思えないので、編集長の好みで勝手に貼り付けているだけでしょうが…。作家の丸谷才一は「思想書を読もう」という鼎談で、次のように述べています。
ビジネス書をいくら読んだって普通のビジネスマンにしかなれない
まあ、当たり前ですね。丸谷氏は「普通のビジネスマンにしかなれない」と言ってますが、私はビジネス書はむしろ有害ではないかと考えています(中には有益な本もあるかとは思いますが)。特に気になるのが、例えが多いことと文章がやさしく、理解しやすいように書かれていることです。この二つにあてはまるビジネス書は駄本です。もちろん読み手が理解できるように書くのが大切だということぐらいは私も知っていますよ。ただ、自分にとって新しい概念や考え方を理解するのには、やはり困難がつきものです。要するに高度な内容が書いてある本はそれなりに難しい。そうした本を苦労して読んでこそ、読書によるステップアップが期待できるのです。だから、もしあなたが高校野球の例えがないとドラッカーのマネジメントが分からないのであれば、そもそもあなたはドラッカーを読解するレベルには達していないのだと考えてください。
ここで評論家・呉智英の次の言葉を紹介しておきましょう。引用の元になった座談会は'82年のものなので、「渡部昇一云々」のところは現代の適当な本に入れ替えてくださいね。
どうです、「生来からのエピクロス主義に加え、隠しきれない狂気の炎をも編集の礎にしながら、ロマンチシズムとカタルシスに生きる全ての男たちの『甘美で危険な未来』に加担せんと意気込む本誌」の読者も、面と向かってこういわれるとちょっとショックでしょう(しかし「辛口文化論」ってのはいい線行ってる。今でもそんな類の新書がよく売れてるからな)。やさしいビジネス書が売れているのは内容がいいからではなくて、やさしいビジネス書しか読めない人がやさしいビジネス書を読んで、やさしいビジネス書しか読めない人に薦めるからです。馬鹿の連鎖です。この悲惨な輪にはまらないよう、がんばっていい本をたくさん読みましょう。
ホラー小説でビジネス力を磨く!?
さて、ここでなんとなく仕事に役立つ良質なビジネス書か、はたまた独創的な発想を生む思想書ほかの学問の本でも紹介する流れになってしまいましたが、それはやりません。面倒だし、特に学問はいろいろの分野があるので、自分の興味がわくものを選んだらいいんじゃないかなと思います。その代わりに、ホラー小説を読んでみることを提案します。ホラー小説をよんでビジネス力を身につけようということです。
ホラー小説というと、角川ホラー文庫の黒い背表紙や、海外ではスティーブン・キングの諸作などを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、今回おすすめするのはそれらの作品よりもっと前、19世紀末からだいたい第二次世界対戦の前までの英国のものです。これらの古い作品群はホラー小説というより、怪奇小説という名前のほうが通りがいいかもしれません。雰囲気もいいので以下では怪奇小説を用いることにします。で、なんで怪奇小説を読むことがビジネス力と関係があるのか。それについては、まず次の二つの文章を読んでみてください。
前者は、主人公が泊まったあやしい屋敷の様子。後者は飛行士が人類未踏の超高度で出会った怪物の描写です。怪奇小説のストーリーというのは、大まかにわけて二つしかありません。
・幽霊に脅かされる。
・怪物に襲われる。
この二つのストーリーがさまざまなバリエーションで書かれています。だから作者は(特に映画が小説に影響を与える前、つまり映像文化によって作者と読者に“ホラー的なもの”がイメージとして共有される以前の時代に生きた作者は)、なんとか読者を怖がらせよう、未知の存在に震え上がらせようとして、苦心惨憺、懸命に想像力を働かせて丹念に描写を重ね、戦慄の終幕に向けて盛り上げていきます。そして、読む側としても、めいいっぱい想像力を働かせてこれを読んでいくことになります。そうせずに読み飛ばしてしまったりしては、「なんだ幽霊の話か」「なんだ怪物の話か」で終わってしまいます。しかし、時には冗長にも思えるこうした小説を、一日の終わりにウィスキーでも飲みながら、一行一行丁寧に追い、幽霊屋敷で主人公に迫り来る邪悪な気配や、おどろおどろしい怪物の不気味さなどを肌に感じるまでに想像しながら一編を読み終わると、なんともいえない贅沢で充実した気分になります。さらに、あなたがビジネスマンなら、読む前よりも読解力と想像力が飛躍的に向上していることは間違いありません。この二つの力がビジネスマンに必須のものであることは言うまでもないでしょう。
もしかしたら我慢強くない人は、そんな悠長な読書なんかしていられるかと思うかもしれません。安心してください。翻訳されている怪奇小説の多くは短編で、たいてい複数の作家の作品を集めたアンソロジーのかたちで発行されています。それに怪奇小説は、先にあげた角川ホラー文庫やスティーブン・キングの登場以前はさっぱり人気がなく、少数の好事家が自分が読んで感心した短編を訳してアンソロジーを編み、それをやはり少数の読者に提供するという状況だったようです。そのため通好で渋い味わいの作品が多く、多少のとっつきにくさはあるものの時代を超えてなお輝く珠玉の作品が揃っています。何から読めばいいか迷うこともなく、ハズレを引くことも滅多にありません。
最後に繰り返しになりますが、仕事ができる男になりたければ、ビジネス書などに手を出しても無駄です。いろんな分野の良い本を読みましょう。そしていろんな本を読みこなすにはまず、その下地づくりとして、贅沢で充実した気分になり、ついでに読解力と想像力を鍛えることのできる怪奇小説を読むのが一番なのであります。
筆者のおすすめ本
■怪奇小説傑作集1 -英米編- 平井呈一・編訳 創元推理文庫
1969年の発行から現在まで版を重ねる怪奇小説の入門シリーズ第1巻。
編訳は、英米の怪奇小説を我が国に紹介するにあたり中心となった平井呈一。
絶妙の語り口による名訳が冴えます。
■イギリス恐怖小説傑作選 南條竹則・編訳 ちくま文庫
先達が訳しこぼしたり、本にまとめそこねた名編を選んで編んだもの。
ユーモアを含むものや風変わりなものも含まれていますが、幽霊屋敷ものの「目隠し鬼」、ホテルの中庭に現れる女の幽霊の顔を覗いてしまった男の悲劇「見た男」などは、夜中に読むと眠れないこと確実、戦慄の傑作です。
■淑やかな悪夢 英米女流怪談集 倉阪鬼一郎/南條竹則/西崎憲・編訳 創元推理文庫
副題通り、女性作家の短編をまとめた集。
雑誌掲載時、「書かれるべきではなかった、読む者の正気を失わせる小説」という抗議が舞い込んだという「黄色い壁紙」を筆頭に、すべて本邦初訳の作品ばかりを収める。
■贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き 宮部みゆき・編 光文社文庫
人気作家が自分の好みでセレクトした一冊。
古典からSF的なものまでバラエティ豊かな内容です。
作品のあいまあいまに編者による作品紹介エッセイが掲載されています。
また、平井呈一の翻訳による名作「のど切農場」が収録されているのが嬉しい。
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もっとも、これらビジネス書を賢明な執筆者諸氏が読んでるとは思えないので、編集長の好みで勝手に貼り付けているだけでしょうが…。作家の丸谷才一は「思想書を読もう」という鼎談で、次のように述べています。
ビジネス書をいくら読んだって普通のビジネスマンにしかなれない
ビジネス書をいくら読んだって普通のビジネスマンにしかなれない(笑)。だって他のビジネスマンもみんなおなじ本を読んでいるんだから。では、人と違う新しい発想を得るにはどうすればいいか。それは、自分がふだん付き合っている領域とは違う本を読むことだと思うんですよ。 |
まあ、当たり前ですね。丸谷氏は「普通のビジネスマンにしかなれない」と言ってますが、私はビジネス書はむしろ有害ではないかと考えています(中には有益な本もあるかとは思いますが)。特に気になるのが、例えが多いことと文章がやさしく、理解しやすいように書かれていることです。この二つにあてはまるビジネス書は駄本です。もちろん読み手が理解できるように書くのが大切だということぐらいは私も知っていますよ。ただ、自分にとって新しい概念や考え方を理解するのには、やはり困難がつきものです。要するに高度な内容が書いてある本はそれなりに難しい。そうした本を苦労して読んでこそ、読書によるステップアップが期待できるのです。だから、もしあなたが高校野球の例えがないとドラッカーのマネジメントが分からないのであれば、そもそもあなたはドラッカーを読解するレベルには達していないのだと考えてください。
ここで評論家・呉智英の次の言葉を紹介しておきましょう。引用の元になった座談会は'82年のものなので、「渡部昇一云々」のところは現代の適当な本に入れ替えてくださいね。
面白ければそれでいいじゃないか、みたいな本の読み方をしてきた連中が、大人になって、三十歳を過ぎるころになってもまだ面白本ばかり読んでいるかというと、そうじゃない。ハードなものを読みたくなるんだ。ところが、彼らにはそういうものを自在に読みこなすだけの咀嚼力がない。そこで何を読むかというと渡部昇一とか山本七平なんかが書いている辛口文化論、あるいは祥伝社の<知的サラリーマンシリーズ>のようなものを読む。ああいうものはいかにも教養本ふうに書かれていますが上っ面をなでているだけの安っぽい本が多い。ぼくは“知識ころがし”って呼んでいるんだけど。 |
どうです、「生来からのエピクロス主義に加え、隠しきれない狂気の炎をも編集の礎にしながら、ロマンチシズムとカタルシスに生きる全ての男たちの『甘美で危険な未来』に加担せんと意気込む本誌」の読者も、面と向かってこういわれるとちょっとショックでしょう(しかし「辛口文化論」ってのはいい線行ってる。今でもそんな類の新書がよく売れてるからな)。やさしいビジネス書が売れているのは内容がいいからではなくて、やさしいビジネス書しか読めない人がやさしいビジネス書を読んで、やさしいビジネス書しか読めない人に薦めるからです。馬鹿の連鎖です。この悲惨な輪にはまらないよう、がんばっていい本をたくさん読みましょう。
ホラー小説でビジネス力を磨く!?
さて、ここでなんとなく仕事に役立つ良質なビジネス書か、はたまた独創的な発想を生む思想書ほかの学問の本でも紹介する流れになってしまいましたが、それはやりません。面倒だし、特に学問はいろいろの分野があるので、自分の興味がわくものを選んだらいいんじゃないかなと思います。その代わりに、ホラー小説を読んでみることを提案します。ホラー小説をよんでビジネス力を身につけようということです。
ホラー小説というと、角川ホラー文庫の黒い背表紙や、海外ではスティーブン・キングの諸作などを思い浮かべる人が多いと思います。しかし、今回おすすめするのはそれらの作品よりもっと前、19世紀末からだいたい第二次世界対戦の前までの英国のものです。これらの古い作品群はホラー小説というより、怪奇小説という名前のほうが通りがいいかもしれません。雰囲気もいいので以下では怪奇小説を用いることにします。で、なんで怪奇小説を読むことがビジネス力と関係があるのか。それについては、まず次の二つの文章を読んでみてください。
家の中が、やけにひっそりかんとしていた。夜のふけるにつれて、風も凪いだ。ただ、ときおり窓にサラサラあたる霙(みぞれ)の音が、ははあ、まだ天地はおきてるな、まだ安心ならないのだな、と思わせた。一、二度窓のガラスがガタガタ鳴り、炉の中へ雨の粒がシューッと降りこんできたけれども、煙出しの中で鳴る夜風のうなりは、しだいに間遠になり、やがて寂しい野中の一軒家は、深い静寂の中にうとうととまどろみだしてきた。燃えている石炭が、ひとりでにガサリと炉の底に落ちこむ音、厚く積もった柔灰の中へ、コソリとかすかな音をたてて落ちていく灰殻の音。沈黙を刻む音は、ただ、それだけである。 |
-アルジャーノン・ブラックウッド「秘書奇譚」平井呈一・訳
夏の海に漂うクラゲを想像ねがいたい。それもつり鐘がたで、ものすごく大きなもの――セント・ポール寺院の円屋根よりも大きなものと申しあげたい。ぜんたいがうす桃いろで、細かい緑いろの脈が通っているが、ぜんたいはじつに薄く、紗のようなものでできているせいか、濃い紺青の空を背景に美しい輪郭をみせているだけだった。繊細に規則正しいリズムで息づいている。二本の緑いろの長い触手がたれていて、ゆっくりと前後にゆれ動く。この華麗なる怪物は、石鹸の泡のように軽く繊細に、音もなく悠然と頭上をすぎゆき、王者のようにゆったりと流れていった。 |
-アーサー・コナン・ドイル「大空の恐怖」延原謙・訳
前者は、主人公が泊まったあやしい屋敷の様子。後者は飛行士が人類未踏の超高度で出会った怪物の描写です。怪奇小説のストーリーというのは、大まかにわけて二つしかありません。
・幽霊に脅かされる。
・怪物に襲われる。
この二つのストーリーがさまざまなバリエーションで書かれています。だから作者は(特に映画が小説に影響を与える前、つまり映像文化によって作者と読者に“ホラー的なもの”がイメージとして共有される以前の時代に生きた作者は)、なんとか読者を怖がらせよう、未知の存在に震え上がらせようとして、苦心惨憺、懸命に想像力を働かせて丹念に描写を重ね、戦慄の終幕に向けて盛り上げていきます。そして、読む側としても、めいいっぱい想像力を働かせてこれを読んでいくことになります。そうせずに読み飛ばしてしまったりしては、「なんだ幽霊の話か」「なんだ怪物の話か」で終わってしまいます。しかし、時には冗長にも思えるこうした小説を、一日の終わりにウィスキーでも飲みながら、一行一行丁寧に追い、幽霊屋敷で主人公に迫り来る邪悪な気配や、おどろおどろしい怪物の不気味さなどを肌に感じるまでに想像しながら一編を読み終わると、なんともいえない贅沢で充実した気分になります。さらに、あなたがビジネスマンなら、読む前よりも読解力と想像力が飛躍的に向上していることは間違いありません。この二つの力がビジネスマンに必須のものであることは言うまでもないでしょう。
もしかしたら我慢強くない人は、そんな悠長な読書なんかしていられるかと思うかもしれません。安心してください。翻訳されている怪奇小説の多くは短編で、たいてい複数の作家の作品を集めたアンソロジーのかたちで発行されています。それに怪奇小説は、先にあげた角川ホラー文庫やスティーブン・キングの登場以前はさっぱり人気がなく、少数の好事家が自分が読んで感心した短編を訳してアンソロジーを編み、それをやはり少数の読者に提供するという状況だったようです。そのため通好で渋い味わいの作品が多く、多少のとっつきにくさはあるものの時代を超えてなお輝く珠玉の作品が揃っています。何から読めばいいか迷うこともなく、ハズレを引くことも滅多にありません。
最後に繰り返しになりますが、仕事ができる男になりたければ、ビジネス書などに手を出しても無駄です。いろんな分野の良い本を読みましょう。そしていろんな本を読みこなすにはまず、その下地づくりとして、贅沢で充実した気分になり、ついでに読解力と想像力を鍛えることのできる怪奇小説を読むのが一番なのであります。
筆者のおすすめ本
![怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51N173D98JL._SL75_.jpg)
1969年の発行から現在まで版を重ねる怪奇小説の入門シリーズ第1巻。
編訳は、英米の怪奇小説を我が国に紹介するにあたり中心となった平井呈一。
絶妙の語り口による名訳が冴えます。

先達が訳しこぼしたり、本にまとめそこねた名編を選んで編んだもの。
ユーモアを含むものや風変わりなものも含まれていますが、幽霊屋敷ものの「目隠し鬼」、ホテルの中庭に現れる女の幽霊の顔を覗いてしまった男の悲劇「見た男」などは、夜中に読むと眠れないこと確実、戦慄の傑作です。

副題通り、女性作家の短編をまとめた集。
雑誌掲載時、「書かれるべきではなかった、読む者の正気を失わせる小説」という抗議が舞い込んだという「黄色い壁紙」を筆頭に、すべて本邦初訳の作品ばかりを収める。

人気作家が自分の好みでセレクトした一冊。
古典からSF的なものまでバラエティ豊かな内容です。
作品のあいまあいまに編者による作品紹介エッセイが掲載されています。
また、平井呈一の翻訳による名作「のど切農場」が収録されているのが嬉しい。
◆参考文献
・丸谷才一の発言・・・丸谷才一『ゴシップ的日本語論』文芸春秋
・呉智英の発言・・・雑誌「BOOKMAN #1 特集・なぜかいま岩波文庫が読みたくなった!!」イデア出版
・生来のエピクロス主義云々・・・本誌のAboutをご覧ください。
・ブラックウッド「秘書奇譚」・・・平井呈一・編訳『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫
・コナン・ドイル「大空の恐怖」・・・『ドイル傑作集Ⅲ-恐怖編-』延原謙・訳
・丸谷才一の発言・・・丸谷才一『ゴシップ的日本語論』文芸春秋
・呉智英の発言・・・雑誌「BOOKMAN #1 特集・なぜかいま岩波文庫が読みたくなった!!」イデア出版
・生来のエピクロス主義云々・・・本誌のAboutをご覧ください。
・ブラックウッド「秘書奇譚」・・・平井呈一・編訳『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫
・コナン・ドイル「大空の恐怖」・・・『ドイル傑作集Ⅲ-恐怖編-』延原謙・訳
アイガー・パンプキン号 あいがー・ぱんぷきんごう/カシオペア校歌にセ○ウムさん、さかのぼればイケメン武将隊に減税、本筋を外して全国にアピールする愛知県生まれ。煙が外に出ないように、扉はしっかり閉めてね! |

私が幼かった頃、看護師は「将来の夢ランキング(女の子編)」で大体3位くらいには入る人気の職業だった気がする。例に違わず、私自身もその道を志し、回り道はしたものの看護師となった。そんな私のリアルタイム婚活ドキュメント。
看護師というのはつくづく面倒くさい仕事だ。日勤・夜勤の不規則勤務、女性主体の職場、クレーマーやら893な患者の対応など、想像に容易い劣悪な職場環境…。
コンパなどの評判を聞くと、とにかく男性陣には人気がある様子である。白衣のイメージなのか、はたまたAVの影響なのか。だが、うっかりそれに騙されていい気になっている場合ではない。「看護師は高給取り」という世間のイメージが、駄目なヒモ男を引き寄せる。実際、私が見てきた看護師の彼氏・旦那の6割くらいがヒモ要素満載のダメ男であった。私の職場にも、結婚をしてマンションを購入したが、夫の稼ぎが悪く、労災級の腰痛を抱えて冷や汗をかきながら働く看護師がいた。まあヒモ男でなくとも、大概夜勤だの休日勤務だのと、ご世間様とズレた生活をしている間に浮気をされるのが関の山である。
そんなこともあってか、職場にはアラフォーやアラフィフの独女たちが幅を利かせている。彼女らは高そうな洋服を着て、セレブなマダムアイテムを配置し、海外旅行だ高級レストランでお食事だなどと“おひとりさま”を楽しんでいるように見せる術に長けてはいるものの、やはり業務終了時間間際になった時の態度に全てが表れる。なぜか業務終了間近になると増えていく仕事、急遽始まるカンファレンス(小会議)…一向に帰ろうとしないのだ。それも、若手職員を巻き込んで。夜勤明けともなると、そのほうれい線から漂う哀愁は若手の焦りを誘う。
若手は若手で、そんなエセ“おひとりさま”を楽しんでいます風の独女たちを見ているだけあって、男を作ることに必死である。職場に男がいないわけではない。どうせ狙うなら、金を持っていてイケメンな若手の医者…と言わんばかりに、あれやこれや、あからさまに狙う看護師もいれば、さも狙っていませんという顔で弱った獲物を狡猾に狙う看護師もいる。しかして、看護師の世界はまだまだ女の園。女の絶対数が多ければ、勝ち残るのは女優にでもなれそうな美人でモデルの様にスタイルも良く、かつわずかなチャンスも逃さずに医師に擦り寄っていくようなバイタリティーのある看護師である。大体そんな看護師が、若手の人気医師かイケメン研修医をさらっていき、とっかえひっかえご賞味するのだ。その後ポイされた医者をそれなりの美人看護師がおめでた婚で確保する、そんな構図が成り立っているから恐ろしい。
出会いが少ない!?ナースのお仕事
では看護師は絶対幸せになれないのか?といえば、実はそうでもない。
こんな状況であっても、それほど大きなリスクを背負わずにいわゆる“勝ち組生活”を確保している看護師は確かに存在する。それは「学生時代に、それなりの大学に通っている大人しくて優しい彼氏を確保し、そのまま結婚した看護師」だ。
彼女らは結婚と同時に総合病院を退職、その後施設やクリニックなどでパートとしてのんびりと仕事をしている。ところがわれわれヒヨッコ看護師は、日常生活でその御姿を拝むことはほとんど出来ない。看護師の世界には、若手とバリキャリ系はとりあえず総合病院で働くという暗黙のルールがあるからだ。
よっぽど異性に興味がない人か特別に優秀な人を除いて、日々徒労感と将来への不安を抱えながら総合病院で身を粉にして働く若手看護師のハードな現実。まさかこの業界に、まったりと時間が流れ、休憩時間には各々で持ち寄った手作りスイーツでティーパーティーが行われ、そんでもって上司は余裕があって優しくて、業務は時間通りに終わる――そんな職場環境があるなんて夢にも思わずに。
んで、例に漏れず総合病院の若手(?)でありながら、ひょんなことからそんな看護師の桃源郷を知ってしまったこのワタクシ。どうにかこうにかそちらに行きたい!お邪魔したい!ということで、あれやこれやと戦略を練りながら、いよいよ次回から婚活開始!?このエッセイで一部始終をリアルタイムに配信していきます。お楽しみに。いや、楽しませてる場合じゃないんだけど編集長ッ!
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看護師というのはつくづく面倒くさい仕事だ。日勤・夜勤の不規則勤務、女性主体の職場、クレーマーやら893な患者の対応など、想像に容易い劣悪な職場環境…。
コンパなどの評判を聞くと、とにかく男性陣には人気がある様子である。白衣のイメージなのか、はたまたAVの影響なのか。だが、うっかりそれに騙されていい気になっている場合ではない。「看護師は高給取り」という世間のイメージが、駄目なヒモ男を引き寄せる。実際、私が見てきた看護師の彼氏・旦那の6割くらいがヒモ要素満載のダメ男であった。私の職場にも、結婚をしてマンションを購入したが、夫の稼ぎが悪く、労災級の腰痛を抱えて冷や汗をかきながら働く看護師がいた。まあヒモ男でなくとも、大概夜勤だの休日勤務だのと、ご世間様とズレた生活をしている間に浮気をされるのが関の山である。
そんなこともあってか、職場にはアラフォーやアラフィフの独女たちが幅を利かせている。彼女らは高そうな洋服を着て、セレブなマダムアイテムを配置し、海外旅行だ高級レストランでお食事だなどと“おひとりさま”を楽しんでいるように見せる術に長けてはいるものの、やはり業務終了時間間際になった時の態度に全てが表れる。なぜか業務終了間近になると増えていく仕事、急遽始まるカンファレンス(小会議)…一向に帰ろうとしないのだ。それも、若手職員を巻き込んで。夜勤明けともなると、そのほうれい線から漂う哀愁は若手の焦りを誘う。
若手は若手で、そんなエセ“おひとりさま”を楽しんでいます風の独女たちを見ているだけあって、男を作ることに必死である。職場に男がいないわけではない。どうせ狙うなら、金を持っていてイケメンな若手の医者…と言わんばかりに、あれやこれや、あからさまに狙う看護師もいれば、さも狙っていませんという顔で弱った獲物を狡猾に狙う看護師もいる。しかして、看護師の世界はまだまだ女の園。女の絶対数が多ければ、勝ち残るのは女優にでもなれそうな美人でモデルの様にスタイルも良く、かつわずかなチャンスも逃さずに医師に擦り寄っていくようなバイタリティーのある看護師である。大体そんな看護師が、若手の人気医師かイケメン研修医をさらっていき、とっかえひっかえご賞味するのだ。その後ポイされた医者をそれなりの美人看護師がおめでた婚で確保する、そんな構図が成り立っているから恐ろしい。
出会いが少ない!?ナースのお仕事
では看護師は絶対幸せになれないのか?といえば、実はそうでもない。
こんな状況であっても、それほど大きなリスクを背負わずにいわゆる“勝ち組生活”を確保している看護師は確かに存在する。それは「学生時代に、それなりの大学に通っている大人しくて優しい彼氏を確保し、そのまま結婚した看護師」だ。
彼女らは結婚と同時に総合病院を退職、その後施設やクリニックなどでパートとしてのんびりと仕事をしている。ところがわれわれヒヨッコ看護師は、日常生活でその御姿を拝むことはほとんど出来ない。看護師の世界には、若手とバリキャリ系はとりあえず総合病院で働くという暗黙のルールがあるからだ。
よっぽど異性に興味がない人か特別に優秀な人を除いて、日々徒労感と将来への不安を抱えながら総合病院で身を粉にして働く若手看護師のハードな現実。まさかこの業界に、まったりと時間が流れ、休憩時間には各々で持ち寄った手作りスイーツでティーパーティーが行われ、そんでもって上司は余裕があって優しくて、業務は時間通りに終わる――そんな職場環境があるなんて夢にも思わずに。
んで、例に漏れず総合病院の若手(?)でありながら、ひょんなことからそんな看護師の桃源郷を知ってしまったこのワタクシ。どうにかこうにかそちらに行きたい!お邪魔したい!ということで、あれやこれやと戦略を練りながら、いよいよ次回から婚活開始!?このエッセイで一部始終をリアルタイムに配信していきます。お楽しみに。いや、楽しませてる場合じゃないんだけど編集長ッ!
大須ぱる子 おおすぱるこ/愛知県出身・在住の現役看護師。幼少期の得意技はとび蹴り。男運悪し。好きなもの、エヴァ・猥談・牛すじカレー。時々白目、時々昇龍拳。 |

毎年のように参戦していたサマソニ、今年は都合でどうしても行けず…無念。そこで今回は、今年のサマソニで一番観たかったバンドを取り挙げたい。レッチリやストロークス、ティンティンズなど観たいバンドが尽きない中、イチオシはUS西海岸からザ・モーニングベンダーズである。
彼等、実にクセがあって面白い。最近お目にかかれなかった待望の「濃ゆい」バンドなのだ。どこか懐かしさを感じさせつつもDEERHOOFの匂いも嗅がせてくれそうな…そこまで言ってしまうとほとんど偶像に近いかも知れないが、フジロックに出てそうな感じなのに何だかとってもニュータイプなのである。
某音楽チャンネルでたまたま『All Day Daylight』のPVを見たときに、これから来るであろう大きな波を感じずにはいられなかった。その時はちょうど歌詞にちなんだ日本語のテロップが出ていたこともあり、そのクオリティは春夏秋冬の順序をバカ真面目に守りながら、四季の風情をじわじわと醸し出しているかのように見えた。音の効果がプラスチックでパッケージした波紋のようで、強く打ちつけずほのかに音を揺らしながら、安定感抜群の時流をもってその一瞬に漂わせてくれるのだ。そのプレミアム感たるや、もはや“Big Echo”を超えて“The Great Echo”と世界中に向けて高らかに宣言してもいいのではないか!?と思える程なのである。
また、『All Day Daylight』は少々キャッチー過ぎるのであまり感じられないかもしれないが、全体的には僕らを原点回帰させてくれるタイムマシンのような作品でもある。単に過去の栄光にしがみつくのではなく、古き良きものをアレンジしながら新たな創造物として昇華していく事は、彼らにとって結成の地…カリフォルニアのバーグレーで見た美しい夕日が示した希望とイコールだったに違いない。味わい深さを十分に備えていながら、じわじわと明日へのモチベーションが高まっていく作品なのである。
最後に、アルバムのブックレットの言葉を綴っておきたい。
shouting into a valley
big shout: big echo
small shout: small echo
渓谷に向けて叫ぶ。
大きな声で叫べば大きくこだまし、
小さな声で叫べば小さくこだまする。
―禅の格言より
きっとSONIC STAGEでもその勇姿を存分に披露していたはずだ。これを読んでいるあなたにも、内なる“BIG ECHO”が届くことを大いに期待している。
>> 続きを読む
彼等、実にクセがあって面白い。最近お目にかかれなかった待望の「濃ゆい」バンドなのだ。どこか懐かしさを感じさせつつもDEERHOOFの匂いも嗅がせてくれそうな…そこまで言ってしまうとほとんど偶像に近いかも知れないが、フジロックに出てそうな感じなのに何だかとってもニュータイプなのである。
某音楽チャンネルでたまたま『All Day Daylight』のPVを見たときに、これから来るであろう大きな波を感じずにはいられなかった。その時はちょうど歌詞にちなんだ日本語のテロップが出ていたこともあり、そのクオリティは春夏秋冬の順序をバカ真面目に守りながら、四季の風情をじわじわと醸し出しているかのように見えた。音の効果がプラスチックでパッケージした波紋のようで、強く打ちつけずほのかに音を揺らしながら、安定感抜群の時流をもってその一瞬に漂わせてくれるのだ。そのプレミアム感たるや、もはや“Big Echo”を超えて“The Great Echo”と世界中に向けて高らかに宣言してもいいのではないか!?と思える程なのである。
また、『All Day Daylight』は少々キャッチー過ぎるのであまり感じられないかもしれないが、全体的には僕らを原点回帰させてくれるタイムマシンのような作品でもある。単に過去の栄光にしがみつくのではなく、古き良きものをアレンジしながら新たな創造物として昇華していく事は、彼らにとって結成の地…カリフォルニアのバーグレーで見た美しい夕日が示した希望とイコールだったに違いない。味わい深さを十分に備えていながら、じわじわと明日へのモチベーションが高まっていく作品なのである。
最後に、アルバムのブックレットの言葉を綴っておきたい。
shouting into a valley
big shout: big echo
small shout: small echo
渓谷に向けて叫ぶ。
大きな声で叫べば大きくこだまし、
小さな声で叫べば小さくこだまする。
―禅の格言より
きっとSONIC STAGEでもその勇姿を存分に披露していたはずだ。これを読んでいるあなたにも、内なる“BIG ECHO”が届くことを大いに期待している。
路考茶 ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop |