

ART-SCHOOLの戸高さんもその推薦文で「いきなり声に吸い込まれる。(中略)つまりは、深いところに入ってくる音楽」という表現で絶賛されていたが、まるで永遠を歌うかのような声の伸びが、凛とした芯の強さを感じさせてくれる有様は、もはや天使としかいいようがない。
この際白状してしまうが、もともと自分自身、彼女のような質感の声がどうしようもなく好きなのである。これは、個人的には安藤裕子さんやクラムボンの原田郁子さん、羊毛とおはなのおはなさんの影響も大いにあるのだが、以前に出会った気がするのに全く新しい、いわば光と闇を織りなす物語の世界に誘われるアノ感覚がたまらないのだ。言い方は悪いが、ある意味ドラッグに近い症状かもしれない。
憂いと祈りを併せ持ったその音楽的表情からは、たとえ人間の葛藤や摩擦がその曲で浮き彫りにされたとしても、なぜか聴き終わると煩悩から解き放たれているリスナーの姿が容易に想像できる。その開放感たるや、まるで森の湖畔で誰にも邪魔されず、思いっきり足を伸ばしてハンモックで昼寝するかのようだ。一例を挙げるなら、アチコさんのボーカルにも通じるところがある。また、KARENの『Birds and Train』に匹敵する恍惚感と表現してもいいかもしれない。
今や一点の曇りもなく、裸のまま外界に解き放たれた彼女の音色は、これからも時間に追われ急ぎ過ぎた現代人に適度なゆとりをもたらしてくれるに違いない。癒しを求める諸賢は、是非ご一聴されたし。
路考茶 ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop |