特集4アイコン05リストラ時に希望退職者を募らず、経営陣は責任転化、あくまで本人の能力不足として若手を追い詰めていく卑劣な「ネオ・ブラック企業」。こうした相手にカザーナ世代はどう対処すべきなのか。プロの現役キャリアコンサルタントであるKさんに尋ねると意外な答えが―?



Kさん/某大手人材サービス会社のキャリアコンサルタント(個人転職者担当)。今年で社会人6年目のカザーナ世代。主にIT業界出身の方の転職支援業務に従事。個人のキャリアカウンセリングに関心が強く、GCDFカウンセラー資格を取得。転職支援の仕事に限らず、働く個人のキャリアを真剣に考えることがやりがい。



リストラは転職のハンデにならない!?

―――20代のリストラに関する相談が増えた、みたいな実感はありますか?

Kさん:相対的に見るとやはりそこまで多いわけではありませんが…リーマン・ショック以降、確実に増えましたね。経験が足りない、能力が足りない若手を容赦なく切る傾向は出てきました。

―――10年選手ならまだしも、入社3年程度だったら正直、同期との能力差なんてまだ大したことないじゃないですか。与えられている仕事内容だって会社にとってそれほど重要なわけでもないから、クビになるところまではいかないはず。なのに、「自分は能力がないから、この状況じゃクビでも仕方がない」って、そう思い込まされている。社会経験が浅いから、会社のリストラ策にまんまとハマってるんです。「なんで自分が!」みたいに怒る気力すら奪われて、失意のまま辞めていく。こんな若者、というか同年代が増えてきていることが、本当にやりきれないんですよ。

Kさん:実は、若年層の方々に対する転職支援の仕事で一番多いのが、そういう「僕はどうしたらいいんでしょう?」というような相談なんです。これまでのキャリアを活かしてより上の環境で活躍して年収を上げていきたい、キャリアを変えてこの能力を習得していきたい…という人が来るイメージが強いかも知れませんが、実際はそういうハッキリした目的意識がある人は少ないですね。「どうしたらいいか分からない」というような、曖昧な人が多いです。そういった方が抱えている問題をはっきりさせたり、整理したりするお手伝いをするのが私たちの仕事なんですよ。

―――そこでズバリ聞きたいわけなんですが、例えば転職する時に、採用面接などで「リストラがありまして…」って本当に言わなきゃいけないんでしょうか?こんなこと言うと怒られそうですけど、こんな状況だったら別にわざわざ正直に言わなくてもいいと思うんですよ。極論、履歴書にだって書く必要はないんじゃないかと…。ただでも不況の最中で転職しなきゃいけない状況に追い込まれてるのに、これじゃ不利になる一方。可哀想ですよ、本当に。

Kさん:なるほど、これに僕が答えるから今回は匿名なんですね(笑)。

―――そうです(笑)。だってネットで知恵袋的なものを見ていても、「しっかり事情を説明すれば耳を傾けてくれる会社もあります。頑張りましょう」みたいな甘ったるい正論ばかりなんですよ?でも、そんなはずないじゃないですか。能力差がそこまであるはずがない中で、「リストラされた人」と「されてない人」、どっち採るかってなったら…やっぱり勝負決まってますよね?本人はきっとその会社で仕事人生をやり直したいっていう気持ちで面接に臨んでるはずなのに、そんな所でハンデ負ってる場合じゃないですよね?

Kさん:そうですね…あえて冷静にお答えすると、そこはやはりリストラの理由によりますね。「会社の人員整理でやむを得ず」なのか、「本当に能力がないから」なのか。ここが一番重要なポイントなのですが、実はほとんどの企業の人事担当者は、その人がリストラに遭ったこと自体は気にしていません。ハンデにはなりませんよ。

―――ほ、本当ですか?書いちゃいますよ!?信じていいんですか??

Kさん:ええ。本人にとっては重い問題でしょうから、気負ってしまうのは仕方ないと思います。ですが、関係ありませんよ。そんな所で変なバイアスをかけていい人材を採り逃す方が、企業にとっては損失ですから。それよりよっぽど重要なのは、そのリストラ経験を「本人がどう受けとめているか」です。

―――どう受け止めているか…。

Kさん:「会社の人員整理でやむを得ず」なら、そのことを自信を持って面接官に伝えればいいと思いますよ。人員を整理しているくらいですから、その会社には仕事がないわけです。そんな中でダラダラやっていてはせっかくのスキルが錆びついてしまう。「自分の能力を存分に発揮できる場を求めて、転職することを決意しました」とハッキリ言ってみてはどうでしょうか。そもそもこの人にはぶら下がりの発想がないわけですから、きっと面接官もその前向きさを評価するはずですよ。

―――なるほど。危機に直面した時にどう考えたかを見ているんですね。これなら、正直に言うことが逆にプラスに働く場合もあるかも知れませんね!

Kさん:そうなんです。逆に、リストラ時の嫌がらせなどから、会社の悪口を言ってしまったりするのは絶対ダメです。「僕はもっと頑張りたかったんですけど、会社の業績が悪化して、同期も次々辞めてしまい…」など、言い訳がましくなるのもアウトですね。言いたくなる気持ちは分かりますが(笑)。実際は同じ「人員整理」でも、「ああ、たぶん能力が足りなくてリストラ対象になっちゃったんだな」と思われてしまいます。

―――結局は、本人が普段どういう姿勢で仕事に取り組んでいたかが重要なわけですね。リストラを転職の「原因」と捉えるか「きっかけ」と捉えるか。

Kさん:前者にとっては「きっかけ」に過ぎないと思いますよ。ウジウジ悩んでいても、仕方ないですからね。さっさと次の環境で活躍してやろうという(笑)。



20代のクビ切りはなぜ起こったか

―――それにしても、新入社員の5人分くらいの給料を貰っている50代の無能役員が生き残って、僕らカザーナ世代の若手が何の前触れもなくいきなりクビを切られるっていうのはどうしても納得できないんですよ。

Kさん:う~ん…もしかするとそれは世代論だけで考えない方が分かりやすいかも知れませんね。そもそも今、短いスパンでやってくる時代の変化にどう対応していいのか分からないという会社が本当に多い。そんな中で、それまで頑張ってきた、いわば功労者である40代・50代を切るのは会社にとって単純に怖いんじゃないかと思うんです。単なる保身や身内意識だけではなく、若手の方と相対的に比較しても「現有戦力」である年配の人材を、そう簡単に切れない経営者側の苦悩もあると思います。であれば、これからどうなるか分からない若手を切った方が、まだダメージが少ないのでは…と考えた結果なのかも知れません。あくまで憶測ですが…。

―――でも、そんな行き当たりばったりじゃ、いずれにせよその会社は長くなさそうですね…。

Kさん:ただ、保身に走る経営者が多くなってきているのは間違いないですね。景気が2~3年で大きく変動するようになって、長期的スパンで物事を考えられない会社が増えました。その結果、現在発言力のある40代・50代が定年まで逃げ切ろうとするなかで、若手にしわ寄せが来ている、という状況は確かにあると思います。

―――企業として、事業の持続可能性を考えもせずに、その場しのぎの対応に終始する経営陣。なんかそんな会社で働いていても、この先いいことなさそうだな(笑)。

Kさん:ピンチの時に人の本性は暴かれるもの。法人も同じなのかも知れませんね。



もう失敗しない!これからの「会社の選び方」

―――つい20年程前までは、一つの企業で定年まで働くことが日本の常識でした。でも今は1~2回転職するくらいは当たり前になっています。そうやって若いうちに仕事内容や職場環境のミスマッチを補正できるようにはなってきましたよね。もはや、20代をリストラしてくるような「ネオ・ブラック企業」に無理してしがみつく方がハイリスクだと断言しちゃってもいいですか?

Kさん:そうですね(笑)。少なくともリストラを「ショッキングな出来事」と捉える必要は一切なくなりましたね。「へぇ~」でいいんじゃないですか?

―――「へぇ~」(笑)

Kさん:そのかわり、そういう状況になった時に「へぇ~」で済ませられるように、自分の市場価値を常に意識しながら仕事に取り組むことが大切です。要は「自分はどこでも通用する人材か?」ということですね。

―――でも、社会人3年程度じゃそんな人材になってるはずないですよね。やっぱり次はもうリストラされたくないってことで、安定してそうな大企業を目指した方がいいんでしょうか?

Kさん:う~ん…その考え方じゃまた失敗しちゃうかもしれませんよ。

―――えっ??(汗)

Kさん:今も昔も、営利団体である以上、どんな大企業や老舗企業でも倒産の可能性はあるんです。「潰れない企業はない」んですよ。まだ潰れてはいませんが、最近では東電がいい例ですよね。今まで、景気が悪くなったら電気代を値上げする、それについて誰にも文句は言わせない、マスコミは膨大な広告費で黙らせる、そんなゆるい商売を続けてきた「超優良企業」だったわけですが、この震災でリストラや事業再編など、経営方針の大転換をせざるを得ません。企業の規模や歴史で転職先を決めるのは、これからの時代は非常に危険です。

―――じゃあ、やっぱり安易に転職はしないほうがいいんですね。そうなると僕の後輩のように、毎日何時間もねちねち中身のない説教をされ、机を叩かれ椅子を蹴られ、パワハラに耐えながらでも今の会社に残ることを頑張った方が正解なんでしょうか…。

Kさん:いや、そんな頑張り方をするくらいなら、転職してもっと実のある仕事を頑張った方がいいですよ…。まだ20代なんですから!会社での歯の食いしばり方を間違えてますよ、その後輩は(笑)。

―――ですよね…(笑)

Kさん:リストラ回避という意味で、これからの転職で最も注意すべきなのは業種・業界だと思います。確かに「潰れない企業はない」んですが、「絶対になくならない業種・業界はある」んです。例えば普遍的なものとして、「衣食住に関わる生活産業(インフラビジネス)」は人が生きる限り存在し続けるものでしょうし、今後の近未来の日本に限った話であれば「介護ビジネス」などは少なくとも20年、30年は成長していく産業と言えます。当然、逆に「消えゆく業種・業界」もある。要は現状のブランドイメージに惑わされずに「今、世の中から必要とされている業種・業界」で活躍しようという気概が持てれば、転職先もおのずと決まってくるでしょうし、これからの仕事人生は明るくなると思いますよ!

―――そうか、みんな新卒の時から「どういう企業に入るか」ばかり考え過ぎだったんですね。学生の頃、真剣に就活したつもりだったけど、今思えば銀行・商社・マスコミとか大企業ブランドでしか考えていなかったのかも知れない。「今、世の中から必要とされている業種・業界」で仕事を考えれば、仮に企業業績が悪くなってリストラの憂き目にあっても、初めから会社基準で選んでるわけじゃないんだから、全然気にすることなんかないってことですね!

Kさん:そうなんです。新卒時に会社の選び方を間違えて、今回運悪くリストラされてしまった方も、気に病む必要は全くありませんよ。でも、次からは「就社」ではなく、本当の意味で「就職」することを考えて欲しいと思います。

―――本当にその通りですね。先生、最後に一言ビシッと言ってやってください。

Kさん:近年、中小零細と言われる規模の企業でも、世界的な大企業と取引している例がたくさん出てきています。ITシステムの浸透により少人数であってもビジネスがしやすくなり、またインターネットの普及で国境をまたいでビジネスができるようになったことなどから、かなり高度な仕事を中小企業が行えるようになったケースが増えてきているんですね。厳しい時代ですが、やりがいを求めて転職するあなたを待っている市場はたくさんあります!大丈夫です。私で良ければいつでも相談に乗りますよ。

―――ありがとうございます。あ、そういえばこういう相談ってお金かからないんですか?

Kさん:実は、相談だけだとこっちは1円にもならないんですよ(泣)。でもいいんです。本当に儲けたかったら他の仕事やってますし、その人との縁が巡り巡って仕事になるようなこともありますから(笑)。