特集2アイコン05この問題、実は大半の企業がリストラ実施を公言しないため、「どこの企業が何人を対象にクビ切りを実施、そのうち〇%が20代の若年層」という直接的な統計が存在しません。しかし、一見異なる事象を時系列で追っていくことで、その惨状が明らかになってきました。
週刊 東洋経済 2009年 1/10号 [雑誌]


■「社長からは何の説明もなく、退職者の中には今年、入社したばかりの1年生もいた」

■十分なキャリアを築けないまま中途半端に放り出された若手に対して、転職希望先は冷ややか

■リストラが本格化するのは2009年に入ってから


―――2008年11月26日/日経ビジネスONLINE


「資金繰りが悪化して、とにかくキャッシュがない。V字回復するためにも、半数以上の人員を削減する。希望退職者を募る余裕はないし、退職金も出せない」

今夏、東京証券取引所第1部に上場する、ある不動産開発会社でのこと。従業員は社内で最も広い会議室に集められ、総務部長からこうした趣旨の説明を受けた。

同社は昨夏以降、物件の販売が思うように進まず、資金繰りに行き詰まった。今春以降は、ゼネコンや金融機関へ社員が返済や支払いの延期を依頼する電話をかける風景が日常茶飯事になった。

「社長からは何の説明もなく、退職者の中には今年、入社したばかりの1年生もいた」と元社員は語る。リストラの発表から数日が経つと、社員は有給休暇を取って転職活動を始めた。活気のあった広いオフィスは2~3人の人影が動くだけになっていった。

「10年後には社員を8倍以上に増やす」「海外進出の計画もある」

会社が語るビジョンに夢を託し、希望を抱いて社会に飛び出したばかりの若手にも、リストラの波は容赦なく襲いかかった。

同社の経営企画担当者は、「指名解雇ではない。残りたい人は残ってもらって結構、と伝えた。会社が生き残るためには仕方のないこと」と、淡々と語る。あくまで退社は本人の意思という主張だ。

十分なキャリアを築けないまま中途半端に放り出された若手に対しては、転職希望先も冷ややかだ。20代の元社員は、面接でこれまでの経緯を説明すると、「結局、自分から逃げたんじゃないの」と切り捨てられ、採用には至らなかったこともあった。

「会社の業績が悪くならなければ、ずっと働き続けたかったのに」

忠誠心を持ち、ともに成長を支え続けてきた社員を、企業の存続のために切り捨てる──。生き残りをかけたなりふり構わぬ人事戦略が、若手のキャリアプランを狂わせている。

今回のリストラの潮流は、1990年代後半から始まったそれとはまた種類が異なる。

これまでは「40歳以上の希望退職」など一定の年齢を超えた、管理職を中心とした人員削減が多かった。しかし、今回は「将来の成長が見込まれる若手は対象外」という聖域はない。事業や部署といった縦割の区分による、世代を問わない人員整理が目立つ。

上場企業やその関連会社を中心に、リストラ対象従業員の再就職支援事業を受託しているパソナキャリア(東京都千代田区)にも、連日のように若手を含めたリストラに関する相談が持ち込まれている。そのペースは過去最多という。

「過去10年間の人員削減や派遣労働者などへの切り替えで、一定の余剰人員は削減できた。今回のリストラの目的は、事業の選択と集中による不要事業の一掃にある。そのため再就職支援依頼の規模は、かつての1000人単位から、最近は多くて100人単位と規模も小さくなっている」とパソナキャリアの渡辺尚社長は語る。

企業の動きからすれば、リストラはまだ序章に過ぎない。「リストラが本格化するのは2009年に入ってから」と、再就職支援業界ではささやかれている。




■ホームレス自立支援センター、20代・30代の入所者が急増。

■30代以下の割合:06年度15.0%、07年度18.9% → 09年度33.2%に急上昇
―――2010年2月10日/asahi.com

大阪、東京などにあるホームレスのための自立支援センターで、20~30代の入所者の割合が急増している。大阪は全体の3分の1に達し、東京も4分の1近くが若年層となっている。リーマン・ショック前後の雇用情勢の悪化が、若年ホームレスを生み出していることをうかがわせる。

市内5カ所に自立支援センターがある大阪市。支援の中身を検討するため、いったん希望者全員が入る自立支援センター「舞洲(まいしま)1」の年代別データによると、30代以下の割合は2006年度15.0%、07年度18.9%だった。これが09年度4~12月の入所者500人では、33.2%と急上昇した。平均年齢も50.5歳から44.1歳に6.1歳下がった。市のホームレス自立支援担当者は「昨年1月ごろから新たにホームレスになる若年層の入所が目立つ。景気の急激な落ち込みが影響していると思う」と話す。

東京都内の5カ所の自立支援センターの30代以下の割合は、07年度18.2%、08年度19.1%と2割を切っていた。これが09年度(4月~10年1月)の入所者計1154人でみると、23.9%に上昇。新宿区など4区をカバーする「中央寮」など2カ所では、30%前後に達している。センターごとの平均年齢も06年度と比べて1~5.2歳若くなった。

特別区人事・厚生事務組合の自立支援課は「雇用情勢が厳しくなっていることが、利用状況に反映しているのではないか」とみる。

厚生労働省は03年初めと07年初めの2度、大がかりなホームレスの全国調査を実施している。07年調査の平均年齢は57.5歳で、03年調査よりも1.6歳上昇し、野宿生活の長期化傾向が指摘されていた。「若年ホームレス」の増加は、国の調査後に浮かび上がった傾向とみられ、リーマン・ショック後に加速している。行政や民間の支援担当者からは、金融危機後に急増した若年層と、野宿生活が長引く50~60代の高年齢層の二極化が進んでいるとの声も聞かれる。




■09年度に20代・30代の自殺率が過去最悪を更新

■原因・動機に「失業」を含む自殺者、08年比で7割増


―――2010年5月18日/毎日新聞

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報道されない「20代リストラ」の惨状

いかがでしょうか。単純にこれだけを通して見ても、2008年のリーマン・ショック直後から若年層のリストラは開始され、2009年の絶賛実施期間(この間、若者関係の目立ったニュースが無いこと自体不気味なのですが)を経て、2010年初頭には早くもその影響が顕在化。若年ホームレスの数が激増し、自殺率も過去最悪を記録するに至っています。しかも自殺の原因「失業」が前年度比7割増なのです。この変化はもう、何かしら時代の動きがあったと言わざるを得ないのではないでしょうか。

前述した「直接的な統計」は存在しなくとも、ちょっと目を凝らせば分かってしまう程、20代のリストラは深刻さを増していたのです。