サッカー女子日本代表のワールドカップ優勝以来、なでしこジャパン=女子サッカーの熱狂ぶりがすごい。ついに国民栄誉賞を受賞!予想以上の熱狂と扱いの変わりっぷりです。この“なでしこフィーバー”を一過性のものに終わらせない、たった一つの方法とは?
なでしこTOP OF THE WORLD 2011年 09月号 [雑誌]


国民栄誉賞が称えるもの

なでしこジャパンに対して、国民栄誉賞が与えられることになった。国民栄誉賞というと何となく政治家の飾りごとで嘘っぽく感じてしまう自分自身もいたりするのだが、なでしこジャパンの活躍は、国民に希望を与えたという意味でやはり素晴らしかったと思う。しかし、今回活躍した選手や監督といった表の顔だけではなく、もっと根っこの部分についても称賛されるべきではないだろうか。

もちろん、国民栄誉賞がなでしこジャパンの現役選手およびスタッフに対して贈られるものであることは言うまでもないのだが、なでしこジャパンのサッカーを支えている人(所属クラブの仲間やスタッフ、選手を受け入れている企業や地域の人々)や、過去の代表を支えてきた選手とスタッフ全員についても称賛されるべきものであるということを忘れてはいけない。

なでしこジャパンの選手たちは、過去の代表選手やコーチといった「なでしこリーグを支えてきた人たち」が培ってきた歴史の上に、自分たちのサッカーがあるということを誰よりも分かっていると思うし、事実そういう発言も多い。これからは観客である私たちもそういう視点を持つようになれば、なでしこリーグやなでしこジャパンがもっと楽しく観れるのではないかと思う。

筆者は地元が広島なので、岡山の湯郷ベルというクラブを応援したいと思っているのだが、実は湯郷ベルは地元の温泉宿や岡山の複数の企業が協力して多くの選手を支え、職場に受け入れているからこそ成り立っているチームである。実際私も選手が街頭に立って働いているのを見たことがあるのだが、こういう状況だと選手に対する愛着が沸き、自然とチームを応援したいと思うようになる。こうした地域や企業の取り組みがもっとクローズアップされても良いはずだ。



大切なのは熱狂の「その後」

さて、バブル経済の崩壊から不況下を育った我々カザーナ世代(20代後半~30代)はこうした熱狂をどのように受け止めているのだろうか。夢を追うことは確かに素晴らしいことだが、その裏には数知れない苦労や犠牲があるに違いない。同じ立場になったとき自分には夢を貫き通せるだろうか―。そんなことに思いを巡らせた人も多いだろう。しかし、昨今のマスメディアの盛り上がりに対しては「どうせ一時的なものなんでしょう」と比較的冷静に受け止めているような印象を受ける。

思い返せばソフトボール・バレーボール・カーリング・フェンシングといったように、オリンピックなどのイベントで熱狂的に盛り上がり、脚光を浴びたスポーツは多い。しかし、そのスポーツ自体の発展や振興には、一時的な盛り上がりだけではなく、長いスパンでみた発展の仕組み作り、継続的な取り組みが必要だ。なでしこジャパンについても同様で、熱狂のその後で何が行われるのかをしっかり見つめていく必要がある。

今回のなでしこジャパンの活躍で注目を浴びたのが、女子サッカー選手のおかれている厳しい状況だった。女子サッカー選手は会社事務やレジ打ちといった本業の仕事をしながら、練習や試合をこなしている人が多く、プロ契約を結んでいる人は数少ない。そのプロ契約を結んでいる人ですら年収は300万程度だという。経済的にも難しい状況で、本業が終わった後の限られた時間や土日を活用し、サッカーに取り組み、今回のワールドカップで優勝したというのはものすごいことだと思う。
 
ワールドカップ後のテレビ報道などを観ていると、これだけ厳しい環境においてもサッカーをしたいという、なでしこジャパンや女子サッカーの選手たちの「サッカーに対するひたむきさ」が目立った。なでしこリーグの人気も高まり、観客動員も増えているようなので、ひょっとするとプロ契約を結ぶ選手が増えてきたりするかもしれない。また、今回の国民栄誉賞だけでなく、競技に対する色々な支援が検討されているという話も聞く。なでしこジャパンの大きな魅力の一つは、きっとその一生懸命さやひたむきさに違いない。自分としては、待遇や給与が良くなったとしても、そういう姿勢が失われないようにしてほしいと思う。所詮にわかファンの杞憂に過ぎないのかもしれないが――。



感動に対して支払うべき「対価」

そこで、同世代の皆さんに提唱したいことがある。それは今回のなでしこジャパンのワールドカップ優勝についてもそうなのだが、感動したことに対して何か「お返し」ができないだろうかということだ。サッカーに限らず、自分が感動したスポーツ…何でもいいので「この競技を末永く応援していこう」というスポーツを持つこと。それがマイナーなスポーツならそっちの方が良いと思うし、もちろんサッカーならそれでも構わない。とにかく感動をもらったタイミングでもうちょっと深く知る、好きになる努力をしてみようということである。

音楽や映画といった芸術から受ける感動に対しては、CDやDVDを買ったりすることで対価を支払う。音楽ならライブを観に行く人だっていると思う。サッカーやその他スポーツにおいてそれは何だろうかと考えると、やはり「スタジアムに試合を観に行く」ということになる。ただ、いきなりスポーツを観に行くのはなかなか大変かもしれない。そこで提案したいのが、まずはとにかく継続的に応援することだ。

先日、セルジオ越後氏のサッカーに関するトークショーを見に行った時のこと。サッカーの専門家であるセルジオ越後氏が、実は5年ほど前から、アイスホッケーを盛り上げようと奮闘しているというのだ。最初、この活動はただ単にセルジオ越後氏がアイスホッケーのチームに名前を貸しただけの話なのかと思ったら、資金集め、選手とのコミュニケーションと結構本気でやっていて、そのトークショーでもアイスホッケーについて熱弁を奮っていた。

我々にはこのようにお金を集めたりとか広報まではできないけれど、スポーツを好きになってtwitterでつぶやくだけでも、十分応援したことになると思う。ワールドカップで味わった感動を一過性のもので終わらせずに、継続的に応援し、あわよくば競技場に足を運んで観戦することを是非おススメしたい。トークショーでのセルジオ越後氏の言葉を借りるならば「子育てをしている人ならなおさら、野球やサッカーだけではなく色々なスポーツに触れるきっかけを作ってあげてほしい」と思う。

今回私たちは、なでしこジャパンに多くの感動をもらった。しかしもう一度ワールドカップやロンドン五輪で感動や喜びを味わうためには、日本代表チームをもっと強くしないといけない。国内リーグを観に行って応援する人が増えることで、選手たちはプレーの質をより向上させようと努力してくれるはず。つまり国内リーグがレベルアップすることが、日本代表の強化につながる――そういう意味でも、まずは自分の地元のチームや住んでいる地域のチームに興味を持ってみよう。ググってみよう。そして、自分なりの応援をしてみよう。あなた自身の人生を「次の感動」につなげるために。

【補足】私の文章ではありませんが、Number誌の「W杯を笑顔で勝ち取った佐々木監督。“なでしこマネジメント”5つの法則。」もカザーナ世代必見のコラムだと思います。興味のある方はこちらも是非ご一読下さい。


notenkihareo
みね/広島県福山市で育つ。趣味はサッカー観戦(テレビ・スタジアム)。サンフレッチェ広島を応援するライトサポーター。
Twitter ID:@notenkihareo