ペンギン・ジャック
ついに完成した1stマキシシングル『地球いただきます』!このタイトルこそ、これから始まる壮大なPJ物語の幕開けを意味する「あいことば」なのか!?必然の出会いから上京、現在に至る二人のこれまでを振り返りながら、"極生POP"ロックユニットの世界観に迫る独占取材!
01表紙



三千世界の夜を越える10年代の“熱”


「正直、このシングルでようやく出発点に立てたなって思っています。でも、これはまだ僕らの計画で言うと、ほんの序章に過ぎないんです」
活動拠点を愛する長崎から東京へと移し、いよいよ本格的に動き出した二人は、すでに地球規模の音楽活動を想定していた――

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本誌創刊のために編集部が5年前から溜め込んだ膨大なアイデアのメモ書き。「CAZANAノート」とも呼ぶべきその黒い手帖の中に記された唯一の“決定事項”。それが、創刊号のペンギン・ジャック特集だった。

制作サイドの立場で考えた場合、閲覧数を伸ばしたいとしたら、巻頭には誰もが知っているマスレベルでの有名人を引っ張ってきたほうがいいに決まっている。つまり極端な話、ギャランティを積めば何とかなる…。
しかし不遜にも、それではこの時代にウェブマガジンを創刊する意味はない、と本誌は考えた。

今からちょうど3年前、ライブハウスで初めて二人の歌声を聴いた時に感じた、他に例えようもない“熱”。それをとうとう今日まで忘れることができなかったという「純然たる主観」を記事にしていかなくて、果たして今日WEBマガジンを世に送り出す意味などあるのだろうか?

何に感動し、何に憤慨し、何を面白がってそれを「特集」と銘打っているのか――そんな雑誌の根幹すら読者に分からしめることなく、“マーケティング”という名のしたり顔をした後追い資料に、編集者の“直感”が敗北してきた媒体が、このクニにはあまりにも多過ぎたのではないだろうか?

そうした日々沸き起こる疑問に自ら応える形で、CAZANAの幾つかのコンセプトは自然と固まっていった。その中でも、「ときめく未来」を切り開くために必要な“熱”の出所を明らかにすることは、もっとも重要なテーマの一つとして編集部内で認知されていた。にも関わらず、それについて今日までに確認できていることは極端に少ない。

たった一つの明白な“事実”を除いて。

それは、ペンギン・ジャック=西川典宏・中田和宏という二人の稀有な才能から生み出される音楽の中に、その“熱”の在り処を感じている人間が、もはや予測困難なペースで増え続けている――ということだ。

一度聴いただけで口ずさめてしまえるような、POPでキャッチーなメロディラインに乗せて描かれているのは、センシティブであるがゆえに日々もがきながら、それでも明日への希望を失うことなく歩き続けようとする等身大の男の物語だ。その世界観の根底に流れる「優しさの中にある本当の強さ」。それこそが、彼らのライブを体感した人間にしか分からない“熱”となって観客の日常へとフィードバックされている。

高田馬場や川崎のインディーズシーンを中心に増えつつあるコアなPJファンが、その“熱”を得るために毎月ライブに足を運び、毎週のニコニコ生放送を心待ちにしているという現状は、決してどこぞの業界人が意図的に作り出した脆弱な流行りなどではない。彼らのライブに訪れた人間なら誰もが感じることができる、紛れもないリアルなムーブメントがそこにはある。

『500ml』の詞に、こんな一節がある。

 不安を逆撫でするような 平成の世を覆う 闇の言葉
 ばかしあいに明け暮れ 疲れ果てて 
 誰かの幸せ 妬んでしまうんだろう

 誰もが手探りで今 奏でたいと願う 愛の言葉
 三千世界の夜を越えて 届ける君に どんな時も


いったい今、人間は、日本人は、何を基準に、何を目指して生きているのだろう。
マス情報に対する絶望的なまでの不信感。
対してネット社会の成熟による価値相対化の進展は、同時に、核心に触れる問題提起や真実の叫びにすら茶々を入れて潰しにかかるような、シラけた状況を世界中に作り出してしまっている。

もしかするとペンギン・ジャックは、そんな現代人が抱える憂鬱に――あわよくば音楽の力で――数ミリでも風穴を空けられたらという願いを込めて歌っているのかもしれない。
情報が洪水のように氾濫している今だからこそ、信じられる何かを、自分自身で見つけ出して生きて行くことの大切さを歌わなければいけないんだと。そしてそれは、世間の誰もが認める偉人ではなく、自分たちのようにストリートから生まれた「あと一歩」「もう一歩」踏み出そうとする夢追い人こそ、叫び続けなければいけないことなんだと。

現に、ラスト4曲目『あいことば』の詞には、そんな二人の気持ちが端的に表されている。

 強がりなのは自分でもよく分かってる
 本当は怯えるくらい臆病なのさ
 未熟を理由にして 身の程を理由にして
 立ち止まるくらいなら 歩き続けよう

 夢幻と誰かが笑ってても
 この思い抱いて走り続けるよ


現状を肯定できるほど出来は良くないけれど、人生を前に進める限り、誰もが過去を愛おしいものに変えていく権利がある。笑いたい奴らには笑わせておけばいい。自分たちの道程でそれを証明してみせる…。この曲が、そんな彼らの誇り高き「宣言」のように聴こえるのは僕だけだろうか。

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さあ、いよいよインタビューである。世界制覇の足掛かりに相応しいものとして、『帰ってきたウルトラマン』第48話のタイトルを拝借したという念願の1stマキシシングル『地球いただきます』。地球ごとペンギン・ジャック色に染めてやろうと企む西川・中田の壮大な計画が、ついに幕を開けた。

二人は今までどんな道を歩いてきたのだろうか?
そして、二人はこれから僕たちにどんな景色を見せてくれるのだろうか?

まずは二人の、決して順調とは言えないこれまでの道のりを振り返りながら、徐々にペンギン・ジャックが思い描く「ときめく未来」の行方を探ってみたいと思う。どうか僕の隣に腰かけているつもりで、これから始まるインタビューを体験して頂きたい。爆笑トークの合間を縫うように、きっと明日へのヒントとなる二人の偽りない言葉が、宝石のように散りばめられているはずだ。

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