世界一のカラオケ大国、日本。カラオケBOXはもちろん、古くは歌声喫茶・スナック・クラブ・バー・旅館、さらには家庭用ゲームに至るまで…世界中探しても、これだけカラオケが普及し、街中にカラオケ店が乱立する国は他にない。カラオケは日本発祥の文化として、またもっとも身近な国民的アミューズメントの一つとして広く認知されるようになった。

しかし、隆盛を極めたこの業界にもいよいよ陰りが見えはじめている。業界動向サーチによると、右肩上がりだったカラオケ業界の業界規模(主要対象企業7社の売上高計)が、昨年初めて減少に転じたというのだ。
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10年間で変わった「カラオケ文化」

表向きは、2009年秋のリーマン・ショックに端を発した金融危機の影響による個人消費の低迷が、カラオケ施設を運営する会社の業績悪化につながったためと言われている。また、それだけではなく、若者の音楽離れがカラオケ離れに直結しているということが業界の定説となっているようだが、果たして本当にそうなのだろうか。

確かに音楽業界の斜陽っぷりはここ数年常態化しているし、90年代に見られたダブルミリオン連発の狂乱ヒットチャートを思い返せば、やれ構造不況だ、やれ若者がネットばかりみて音楽を聴かなくなったからだなどと、したり顔で解説したい評論家がいても全くおかしくない状況ではある。

だが、実態は違う。

別にヒット曲や新曲を歌うことがカラオケのルールとして規定されているわけではない。極端な話、今後10年間新曲やメガヒット曲が一切生まれなくてもカラオケ業界は存続可能である。事実、もはやカラオケ開始前半で積極的に新曲を入れようとする風習はすっかりなくなってきている。一昔前に見られた「新曲を歌わなければいけないプレッシャー」のようなものは、今のカラオケ文化にはない。また、「1曲目の重要性」も格段に薄れてきている。失敗しても多少音痴でも、軽く受け流してもらえるくらいのゆるーいテンションなのだ。10年前なら考えられないような話だが、いつの間にかカラオケの楽しみ方も多様化、自由化が進んでいたのである。

もちろん音楽業界の低迷がカラオケ業界にとって好ましくないことは明白だ。しかし運命共同体かと言えば、決してそうではないと本誌は断言したい。

この10年の間に、通信カラオケを中心としたカラオケ機器及び周辺サービスは驚異的とも言える進化を遂げた。これにより、カラオケBOXも単に歌うだけの箱ではなく、歌うことを中心とした社交場…「歌唱場」と言っても全く遜色ない空間が登場してきている。国内にこれだけのインフラをすでに確立していながら、それでもなお定説通りカラオケが斜陽産業になるとすれば、それはユーザーである私たちの「遊び」に対する想像力や好奇心が衰退していることと同義ではないだろうか。

次世代サラリーマンたる私たちが「再び、真剣に遊ぶために」創刊された本誌としては、この潮流を看過するわけにはいかない。カラオケというルール無用のフィールドで自らの遊び方を開発できないようでは、特定のルールや制約の中でクリエイティビティを発揮しなければならないビジネスシーンでの活躍など見込めるはずもないからである。

すでに「当たり前」になっている存在にこそ、クリエイティブの源泉が眠っている。今回は、カラオケもその一つと考えてみたいと思う。もう会社の飲み会の後で機械的に近くのカラオケ店に予約を取り、狭い室内で終電を気にしながら歌う生活は終わりにしよう。

本特集では、カラオケ業界の現状分析や音楽業界との関連性、業界の五大チェーンであるビッグエコー・シダックス・カラオケ館・カラオケの鉄人・パセラが誇る「旗艦店」の特徴からシチュエーション別利用法までをフィールドワークにより解明していく。またDAM・JOYSOUND・UGAなど通信カラオケの驚くべき最新機能や使い方をも多角的に考察していくことで、次世代サラリーマンが今後カラオケとどう向き合うべきか、カラオケから何を学び、どこへ向かうべきかを徹底検証していきたい。