豚めし/松屋
豚めしは登場以来、その類稀な美味さにおいて松屋が不動のNo,1だと思っているのは、きっと筆者だけではないでしょう。

狂牛病による米国産牛肉の輸入禁止と鳥インフルエンザの世界同時流行で、もはや豚肉しか安全な肉はないんじゃないかくらいに言われていた2004年。松屋は競合他社の群を抜いて美味い豚めしを作ることに成功しました。各社が牛丼の販売中止を余儀なくされ、豚丼など豚を用いた新商品を「やむを得ず」投入する中、なぜ松屋の豚めしだけがロケットスタートを切れたのでしょうか。

実はこの時期に、松屋はBSE対策としてではなく、純粋な「新メニュー」として豚めしを開発していたのです。しかも、日本でBSEが発覚した当日に完成するという"奇遇"が重なった結果、豚めしはあっという間に松屋のスタンダードメニューに上り詰めました。

そしてなにより、その美味が今日まで持続していることが驚異的です。

他チェーンは牛丼販売を再開して以降、豚丼の味を頻繁に変更しました。しかしそのほとんどが「新味」という宣伝文句に隠れた「劣化」でした。これはあくまで筆者の予測ですが、牛丼が再開できた以上、豚が牛よりうまい状況を作るわけにはいかないという牛丼チェーンの思惑があったのではないでしょうか。なぜなら豚丼のスタンダード化は否応なく客単価を下げるからです。あの頃牛丼チェーンの間で「美味過ぎる豚丼」は、「一時的に来客数UP→客単価減→結果減収」という「本当は手を出したくない」両刃の剣として、敬遠されるムードがあったように思うのです。

そんな中、迷わず劇的に美味いタレを作り上げ、しかも今日までその味を存続させているのが松屋なのです。もちろん好みによるとは思うのですが、個人的には牛めしより美味いんじゃないかと思ったことは一度や二度じゃありません。

そうした歴史を振り返ってみても、競合各社と比べて、松屋のストイックなまでの低価格へのこだわりには、時に感動すら覚えます。

牛丼チェーンで唯一、みそ汁をサービスしている松屋。ちなみに吉野家はみそ汁別売で50円です。280円でみそ汁付きなんて、もう一体どこで儲けてるのか分からないほどです(ただし持ち帰りの場合は有料)。

そこで、試しにこの豚めしの価格構造(?)を計算してみましょう。松屋はご飯大盛りが60円です(この数字設定にもストイックさを感じますね)。ご飯大盛りは通常の1.4倍が定説ですので、これを基準にすると、60円でご飯40%UP=ご飯並盛は150円です。単品メニューの「ライス」が150円であることから、この計算と合致することが分かります。

サービスのみそ汁を吉野家基準で50円と考えると、豚めしの具は「豚めし280円-ライス150円-みそ汁50円=80円」となります。あの肉の量で80円…駄菓子並です。もう世の中の価値基準がよく分からなくなってきました。しかも、単品メニューの「豚皿」は230円なのです。上記の基準で考えると、「豚皿230円+みそ汁50円=280円」…あれ?ライスはどこにいったのでしょう?

つまり松屋の場合、豚めしはそれ自体が究極のバリューセットなのです。

この中から経常利益と人件費その他経費を捻出し、上場企業として成長し続ける松屋フーズ。侍ランチに相応しいストイックな姿勢に、筆者はこれからも注目し続けたいと思います。

なお、松屋の豚めしはデンマーク産。今流行りの北欧風なのですよ。

それでは今日も、手と手を合わせて、いただきます。