中華そば/幸楽苑
税抜200円台で食べられる低価格ラーメン業界で最高の一品と言えば、やはり幸楽苑の中華そばではないでしょうか。この価格帯でこのレベルの醤油味を全国展開できる力を持った企業は、筆者が知る限り国内に存在しません。大袈裟ではなく、価格対比で言えば世界一の可能性すらあります。

このあっさりした中にある深いコク、しかも最後まで飽きのこないスープに、モチモチでみずみずしい中太ちぢれ麺。高密度多過水熟成麺という独自技術の結晶らしいのですが、品質を最優先した上質の小麦粉に水を多めに加え、門外不出の製法で仕上げたというこの麺が、プルプルで本当に旨いのです。いつまでも口の中で噛んでいたい感じです。「今日は凝ったものはいらない、普通のラーメンが食べたい!」と思った時、この中華そばはそんなあなたの欲求をとことん満たしてくれるはず。

そういう意味では、この中華そばは幸楽苑のスタンダードであると同時に、日本のラーメンのスタンダードとして認められ得る実力を秘めているとさえ言えそうです。

そして何よりこれが税抜290円なのです。本当にいい国、いい時代に生まれたものです。これだけどこでも安くて旨いものが食べられる国は世界中探しても日本くらいなものでしょう。

しかし、他チェーンと違い幸楽苑は元からこの値段だったわけではありません。

実は2006年5月に税込価格409円(税抜390円)から、税込価格304円(税抜290円)に大幅値下げしているのです。デフレ時代の要請もあり、「さらなる集客効果を図るとともに、ほかのサイドメニューを購入しやすくして客単価を引き上げ、利益率を改善させる」のが当初の目的だったそうですが、実際にはこの値下げ以降、来客数と売上は伸びたものの、原価率の高い中華そばを注文する客が全体の60%を占めるようになってしまい、顧客単価が下がったことで業績が悪化。当時の社長が責任を取って退任するなど、その船出は決して易しいものはありませんでした。

現在はメニュー表記の変更などの施策により業績はV字回復を果たしました。この調子で今後ますます出店ペースを加速させていくに違いありません。この中華そばの価格と味は、60年近い幸楽苑の歴史が誇る不断の努力の賜物なのです。

それでは今日も、手と手を合わせて、いただきます。