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年末と言えば、忘年会。今年も病院の忘年会がやってくる。病院の忘年会と言えば、年間行事の中でも最大のビックイベント。ホテルの大広間を貸し切り、パーティーを行うのだが、そこでも飽くなき女の戦いは繰り広げられる。

パーティーと言うだけあって、参加者にはドレスコードが課せられる。男性は基本スーツなのでまだ良い方かもしれない。問題はオンナだ。基本的にはワンピースかスカートで、何となくオシャレをしていれば良いのだが、その曖昧さが忘年会前の腹の探り合いを誘うことになる。

基本的に院内の女性と言えば、医師、事務員、栄養士や薬剤師、そして看護師。看護師は、医師は別格としても、その他女性職員にはエベレストにも匹敵する見栄とプライドを発揮する。そう、他の女には負けられないのだ。医師の隣に立つのは私なのだ!!と。

どこの病棟でもそうだが、病棟内で最も公私ともに発言権を持っているのは、中堅看護師層だ。病院にもよるが、大体経験5、6年目くらいからがこの層に入る。中堅看護師層はまさに結婚適齢期。仕事もノリにのってきて、調子に乗ってしまうお年頃。彼女らの自己顕示欲はとどまるところを知らない。

だが、彼女らは男性にアピールする上で、自らの立ち位置を、最も目立つ集団の中の2~3番手くらいに置きたいと考えている。派手すぎては引かれてしまうし、目立たなければアピールできないからだ。言うなれば、コンパで一番積極的な子よりも、その隣にいるちょっと控えめな女の子に男性人気が集まる事と似ている。

しかし、その立ち位置に自分を上手く持っていくのは相当に難しい。前後賞を合わせても、3人という狭き門だ。病棟看護師30名弱の内、中堅看護師は10名。その10名が虎視眈々とそのポジションを狙うことになる。

忘年会前になると、彼女らは当日の服装を相談し始める。誰に何が似合うだの、何色が良いだのと、女性誌片手に盛り上がっているが、実質その腹の内は複雑である。もちろん病棟全体の目立ちレベルを上げることにも余念がない。

私たちのようなヒヨッコには、やれ振り袖を着て来いと言ってみたかと思えば、次の日にはそんな大げさなパーティーじゃないから普段着で良いよと言ってみる。

中堅看護師の中でも、服装で揺れに揺れているらしかった。

そして、好き勝手に注文をつけられない上の世代の看護師には、普段会話すらまともにしていないにも関わらず「○○さんは赤とか黄色とか、明るい色が似合いますよねー」などと笑顔で、白髪交じりで背骨の曲がった重鎮(ていうかおばあちゃん)看護師を誘導。

女の恐ろしさを日々痛感する次第である。



そんなこんなで忘年会当日。先輩よりも目立ちはしないかとビクビクするヒヨッコ勢、思い思いに着飾った中堅勢、我が道を行くベテラン勢が相見えた。

全員ほぼモノトーンのヒヨッコは難なくその任務を果たしたが、ベテラン勢はそうそう中堅看護師たちの思い通りにはいかなかった。

バブル期を生きたベテラン美魔女(ていうか魔女)看護師達は、膝丈の大振りな毛皮のコートに女優帽、かと思えば極妻もビックリな牡丹柄の真っ赤な着物など、それはそれはお目立ち度大な格好で参上。ちなみに、かの重鎮看護師は、鮮やかなライムグリーンに赤や黄の小花柄のスーツでお越しになった。

あまりの派手さに私は度肝を抜かれたが、他の病棟も似たり寄ったりであったため、こんな世界もあるのだと感心するより他なかった。

結果、中堅看護師たちは目立つ集団の中の2番手という立ち位置を見事に獲得した。だが、ベテラン勢のどぎつい囲い込み作戦により、男性医師の隣に立つ道は阻まれているようだった。

私は、ベテラン看護師に囲まれた若手研修医たちの引きつった笑顔が今も忘れられない。

大須ぱる子
おおすぱるこ/愛知県出身・在住の現役看護師。幼少期の得意技はとび蹴り。男運悪し。好きなもの、エヴァ・猥談・牛すじカレー。時々白目、時々昇龍拳。