先週、地下鉄九段下駅の壁撤去工事をマスメディア各社が報じたことは記憶に新しい。「駅の改修工事なんて毎日のように行われているものだし、別段騒ぎ立てるほどのことではない。何だ今日は目立ったニュースがなかったんだな、平和だったんだな」と感じた人も多かったのではないだろうか。ところが、実際には利用者の利便性を向上するだけではない、歴史的な転換点として大きな意味を持つ出来事だとする見方が優勢だ。

メトロ-都営の壁撤去へ囲い 九段下駅
PK2011121602100110_size0東京メトロ半蔵門線と都営地下鉄新宿線の九段下駅で、両線のホームを隔てている壁が乗客の利便性を損ねているとして、壁の撤去工事が十六日未明に始まった。終電から始発の間に実施され、地下四階の半蔵門線押上方面ホームの壁を約三十メートルにわたって、鋼板やシートで仮囲いする工事が行われた。

撤去する壁はホーム延長二百十メートルのうち計約九十メートル部分。年内にこの部分の仮囲いを済ませ年明けから案内板や広告看板、天井部分などを取り外す。実際に壁の撤去を始めるのは来年四月からで、二〇一三年三月までに完了させる。改札がある地下三階コンコースの壁二カ所(計約二十五メートル)も撤去する。

壁の撤去後は、半蔵門線の押上方面行きと新宿線の新宿方面行きが同一ホームになる。両線を乗り継ぐ際、ホームからいったん階段を上って改札を通り、再びホームに下りなければならない不便さが解消される。
―――2011年12月16日/東京新聞

普通に読めばなんてことのない凡庸なニュースなのだが、実はこの工事、『地下鉄は誰のものか (ちくま新書)』の著者で東京都副知事の猪瀬直樹氏主導で行われたものだという。だとすれば、この工事自体が東京メトロと都営地下鉄の一元化=地下鉄業界の再編を加速させる象徴的な事業だという見方があったとしても、あながち大袈裟ではない。

つまりこの九段下駅の壁撤去工事には、東京メトロと都営地下鉄を隔てている“ベルリンの壁”を崩壊させるという東京都の意志が込められているのである。

動き始めたのは東京だけではない。今月に入り、大阪市の橋下新市長が市営地下鉄の完全民営化を指示したり、事故報告書の虚偽記載を行っていた疑いのある名古屋市交通局が家宅捜索されるなど、国内主要都市の公共交通機関が持つ、市民感覚との「壁」があらためて問題視され始めている。

この壁撤去が業界再編への第一歩となり、全国的な交通行政の歴史的転換点となる可能性に期待したい。

変 周長
へん・しゅうちょう/1981年愛知県生まれ。本誌編集長。チェーン店評論家。
Twitter ID: @_CAZANA