イカ焼きそば/福しん
先週、福しんに一週間通い詰めました。出張先の近くにチェーン店が福しん1件しかないというラブリーな事態が自然とそうさせたわけですが、サラリーマンにありがちなこの状況をネガティブに捉えていては身が持ちません。ここは一つ「福しん合宿」と名付けて、福しんでのランチを短期間で極めてみようと思い立ちました。自動車免許教習の短期合宿みたいなものです(?)。

幸い、というか迂闊にも、実はそれまで福しん自体が未経験、言うなれば福しん童貞だったことをここで白状します。侍ランチャーとしては(武器みたいですが)恥ずべき状態が続いていたというわけで、この福しん合宿は筆下ろしならぬ箸下ろしを実現する絶好の機会となりました。

2011年6月時点で店舗数40店舗、本社のある豊島区を中心に新宿・練馬・板橋・中野・秋葉原・上野・浅草、さらに埼玉の一部で店舗展開を行っている福しん。あらためて眺めているとかなり首尾一貫したドミナント戦略で、「ターミナル駅か下町っぽさが残る都会」に出店してきたことが分かります。主力の手もみラーメン(380円)をはじめ、低価格路線と底堅い経営方針も創業当時から徹底されており、幸楽苑と日高屋という業界の2大横綱同士の「低価格ラーメン戦争」を静観しつつも、いきなり餃子を常時100円にしてしまうなど、往年の舞の海さながらの魅力的なゲリラ戦を展開してきました。ちなみに、この餃子は価格対比で言えばたぶん日本一旨いレベルです。ご賞味あれ。

さて、そんな福しんのスタンダードメニューを探す「福しん合宿」のレパートリーは、果たして次のようになりました。

月曜日:手もみラーメン+半チャーハン(B定食)
火曜日:イカ焼きそば・ソース味+餃子
水曜日:しょうが焼き定食
木曜日:特製タンメン
金曜日:回鍋肉(ホイコーロー)定食


いかがでしょうか。この中からあえてスタンダードを決定しようというわけですが、これは筋肉質にメニューを絞り込んでいる堅実経営の福しんでしか出来ない芸当だったと今更ながら気付かされます。メニューがこれ以上多かったら、この企画自体が延期になっていたことでしょう。ただ、この5メニューを食することで、他のメニューの味系統もなんとなく理解できるのではないか…という構成になっていることは、実際のメニューを見てもらえれば納得頂けるはずです。

で、本誌が選んだ一押しが、タイトルメニュー「イカ焼きそば・ソース味(480円)」です。中華料理屋で一般的に出てくる五目焼きそばではありません。他のメニューとは明らかに一線を画す屋台味。そうです、屋台の焼きそばそのままなのです。地域の夏祭りで食べる、小学校の町内会ブースで作られているあの焼きそばです。発泡スチロールか透明プラの業務用トレイに入れて出てくる、一皿100円~300円のアレです。食後にレモン味かブルーハワイ味のかき氷があれば最高です。これも一杯100円~300円くらいですね。どうです、時々無性に食べたくなりませんか?

この焼きそばが、福しんでなら毎日食べられるのです!!これは嬉しい発見でした。

家で作るより明らかにオイリーなジャンキーさ。そんなクドそうなものを昼に食べたら午後からの仕事に支障が出るのでは?と思われるかもしれませんが、この油が喉をほどよく潤滑させて、いつもよりデカい声が出せるようになります。喉が乾燥しやすい昨今、これはかなり高得点です。あなたの周りには、声のデカさだけで勝負しているとしか思えないノーリーズンな上司、いませんか?哀しいかな、サラリーマンはデカい声が出せれば相当有利な世界なのです。福しんの焼きそばはかなりそのジャンルで貢献できます。覚えておいてください。

…ちょっと冗談が過ぎましたが、実際は野菜も程よく入っていて、見た目よりクドいわけでもなく、紅ショウガとスープが小皿でついてくる親切設計です。これが驚きの480円なのです。このリーズナブルさは今後重宝しそうな予感です。聞けばこのイカ焼きそば、つい最近まで店舗によって出されている店とそうでない店があった「店舗限定メニュー」だったのですが、この冬からグランドメニューに仲間入りしたとのこと。やはり人気が高く、店舗限定では留まらなかったということなのでしょう。

余談ですが、「ところで、他のメニューはどうだったのだ?」とお思いの皆様、お答えしましょう。福しん、ハッキリ言って焼きそばと餃子以外は、「ふつう」です。もう「ふつう」としか言いようがありません。普通、ふつう、フツー、相応、並、尋常、中庸、平凡、凡庸…日本人の大好きな「普通」が詰まった店、福しん。可もなく不可もなく、全てのメニューを淡々と仕上げてくる無頼職人チェーンです。おそらく何十年も味が変わってないのではとすら思える汎用クオリティ。今回の結果は、他のメニューがすべてスタンダード過ぎる出来であるがゆえに、あえてインパクトのある味にスタンダードの称号が与えられた稀有なパターンなのかもしれません。

それでは今日も、手と手を合わせて、いただきます!