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今日まであらゆる牛丼チェーンで牛丼を食べてきましたが、実はこれまで『サムライ*ランチ』で牛丼を取り上げたことはありませんでした。吉野屋の回ですら牛鍋丼を挙げたくらいです。それは別に奇をてらっていたわけではなく、侍ランチに相応しいスタンダードと呼べるメニューが、たまたまその店では牛丼以外だったに過ぎません。

そんな中、満を持してついに登場した牛丼!しかもそれがあの「なか卯」というわけですから自分でも驚きを隠せません。というのも、なか卯は他の牛丼チェーンと異なり、カレーだけに留まらず「親子丼」「カツ丼」「うどん」という超強力なラインナップをも有した、業界でも稀な“総合丼ぶり店”(General Rice Bowl Restaurant)なのです。我ながら政治家並みにセンスのない英語表記ですね。で、何が言いたいかというと、なか卯は一言で牛丼店と言うわけにはいかない豊富なメニューが売りの和食店であるということです。

これまでの侍ランチの選定基準を考えれば、ここは牛丼チェーンで唯一とも言える親子丼のふんわり卵クオリティーに軍配が上がるはずでした。白状してしまうと、「次はなか卯をやろう」と決めた時点で、半ば予定調和的ですらあったのです。

ところが、この和風牛丼をあらためて食べてみると…これは一体どういうことなのか。牛丼ってもともと日本のものじゃないのか?和風って何だ?などというツッコミが一瞬で吹き飛ぶくらい、バツグンに旨いのです。2010年にゼンショーの完全子会社となり、牛丼はみんなすき家と同じ味になってしまうのだろうと勝手にタカをくくっていた小生、全くいい意味で裏切られたというわけです。

私はまだこの世界を舐めていたのかも知れません。まさかなか卯の牛丼がこれほどの進化を遂げていたとは…。

ここで私はあることを思い出しました。そういえば漫画『キン肉マン』に頻繁に登場する牛丼は、一般には吉野家がモデルと思われがちなのですが、実はなか卯がモデルとなっているのだということを!(参照

キン肉マン/牛丼音頭

こりゃ旨いわけです。

豊富な具材を特製のタレで煮込んだというすっきりとした甘み。 基本の牛肉・玉ねぎに加え、なか卯独自の具材である「しらたき」「白ネギ」(ここらへんが和風なのか?)で食感や旨みが明らかに増した結果、熾烈な競争を極めた吉野家・松屋・すき家のいわゆる“牛丼御三家”には成し得ない独自の進化を遂げたなか卯。そしてゼンショーの軍門に下りながら、個人的にはすき家を凌駕する圧倒的なクオリティを有するに至った、主力の和風牛丼。私はここに、M&Aが盛んに行われてきた直近10年の日本の経済界において、親会社と子会社の関係が緩やかに変質・向上したひとつの証左を見たような気がするのです。

小売業を例に取ってみても、セブン&アイにとってのヨークベニマル、イオンにとってのマルエツなど、完全なトップダウン支配型よりも現場の裁量を最大限維持した連邦型の間接経営の方が、比較的成功しているケースが多く見られます。それをまさに味覚で体現しているのがゼンショーにとってのなか卯、そしてこの和風牛丼だと言えるのではないでしょうか。

そう考えると、激動の日本経済の片隅で店舗クオリティを維持するなか卯の根性。そしてそれを下支えするなか卯ファンの愛情。その全てが結実したこの和風牛丼が旨くないはずがありません。何だか旨さの基準が往年のミスター味っ子みたいになってきましたが、この際気にせず、まずはなか卯に行ってみて下さい。そしてもう一度「和風って何だ?」とつぶやきながら券売機でボタンを押してみて下さい。客・店員問わず、店中の人間に自分が注文した商品名「並!」が響き渡ります。ちょっと恥ずかしい。

それでは今日も、手と手を合わせて、いただきます!