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前回は驚異のカップル生産工場を前にして、柄にもなく落ち込んでしまった私だったが、現実は読者の皆さんの予想以上にシビアである。「落ち込んで引きこもっている暇など、私には残されていないのだ」そう気が付くのに、さほどの時間は要しなかった。

「とりあえず行動しなければ!」

と、上着を取って向かった先は、薄汚れた行きつけの飲み屋。思考するには、ちょっと汚い飲み屋が私には一番合っている。

大将おススメの煮魚をつっつきながら酒をひっかけ、隣の酔っぱらい親父に絡まれながらあれこれ考えた結果、結局のところ、やはり年始めに願掛けをした海鵜作戦に賭けるしかないという結論に達した。

海鵜作戦の良いところは、前回のように人為的でいかにもな出会いにはなりにくい上に、一度で複数の出会いを期待できるところにある。また、互いに共通の目的があるため、比較的会話にも困らない。

さらに、相手の「表情の裏に隠された本心」やら「言動から察せられる思惑」やら…つい斜に構えて余計なことまで考えてしまい、結果自滅する私のようなタイプにとっては、ある目的に精神を集中させることで、そういった面を緩和することもできる。考えれば考えるほど、急がば回れの良策であるように思えてならないのだ。

という訳で、早速「魚群サーチ」を再開してみたが、前々回のように体を張るのはもうコリゴリである。あの一件以来、職場では“鼻血ナース”としてやや気まずい思いをしているのだ。

そんな折、酒飲み友達でもある看護師から連絡があった。その看護師の彼氏は消防士をしており、職場がアットホームな感じで、よく彼女も彼氏の同僚と一緒にお酒を飲んだりしている。そんな彼女から、今度飲み会があるので、一緒にどうかというお誘いがあったのだ。

まさに願ったりかなったり!二つ返事で参加表明をした。



ナースが“女の園”であるのに対して、消防士は消防士で“男まみれ”な生活をしている。消防士の他にも警察官・自衛官などはナースのお相手に多い職業だ。異性との出会いが少ない者同士、わかり合える部分も多く、またお互いに一般社会とはちょっと違う変則勤務をしているため、生活リズムを理解し合える所が何より嬉しい。

そんなこんなで、飲み会当日。

コンパとは違い、完全アウェイな状況ではあるが、初参加でもウェルカムな雰囲気なので、簡単な自己紹介の後は酒の力も相まって大いに盛り上がる。さすが消防士と言うべきか、完全に体育会系の豪快な飲み会である。

年齢層も20代から40代まで幅広く、皆飲みっぷりも良い。私自身が酒飲みだからか、飲みっぷりの良い男性は見ていて気持ちの良いものである。

何気ない会話で盛り上がり、酒を飲む。盛り上がっては飲み、飲んでは盛り上がる。飲んで飲んで、飲まれて飲んで。あれ、何で私ここにいるんだっけ――。

アアッ!で、出会い!私の出会いは!?

我に返ったものの、時すでに遅し。周囲を見渡すと、すでに半数以上が酔いつぶれている状態であった。

酒は飲んでも飲まれるな――。その後、屈強な消防士数人の介抱に追われたことは言うまでもない。

どんなに若くてイケメンな消防士だろうと、どんなに仕事で看護をしていようと、やっぱりプライベートでは男と女。共にインプットしたブツが数時間後にアウトプットされる様子を目の当たりにしてしまっては、百年の恋も冷めるというものである。

ただ消防士と飲む時のメリットといえば、介抱を手際良く、協力して行えるということだろうか。プロの血がたぎる。いや、ここでたぎらせても仕方ないのだが…。

飲んだくれナースの皆様は、くれぐれもお気を付け頂きたい。

大須ぱる子
おおすぱるこ/愛知県出身・在住の現役看護師。幼少期の得意技はとび蹴り。男運悪し。好きなもの、エヴァ・猥談・牛すじカレー。時々白目、時々昇龍拳。