孤高の画壇/虚弱。
読者の皆様はすでにお気付きかも知れないが、私、路考茶は非常にインストなロックバンドが大好きなのである。「toe」や「envy」、「rega」、「LITE」、「te’」、「mudy on the 昨晩」など、挙げたらキリがあるところがまた堪らない。歌詞が無くとも無限に拡がっていく世界観と、サウンドが醸し出す喜怒哀楽の表情に毎度病み付きになる。

そういえば…女性のインストバンドは全く聴いたことがなかった。「チャットモンチー」や「ねごと」、「FLiP」が世に出てきた時の衝撃もものすごかったが、この「虚弱。」を知った時は、ショックのあまり思わず人前で唸ってしまったほどだ。まさにこのジャンルで待望のバンドが現れたと言っていいだろう。

確かにアプローチとして最初に挙げたインストバンドと共通してはいるが、一クセも二クセも異なる魅力がミルフィーユのように重なり合っている。同時期に知って、同じく唸ってしまったバンド「イツエ」と強烈なまでにリンクするのである。

色濃くメルヘンチック、しかし霧が深くかかった黒い森の中で、日常の中で失った大切な何かを捜し求めていくような…期待と不安の交じり合ったリズムの往来。迷いなく感嘆してしまう美しさ。美術館のBGMで率先して使っても遜色ないクオリティ。モナリザの傍らに彼女たちの音楽をマストで流しておきたいといったら言い過ぎだろうか。

インストバンドは往々にして、かなりストイックなイメージを持たれることもあるだろうが、逆に言えば、心の奥底から自然と湧き出てきた音を、アラベスクなど一定の模様に整列して流していくように曲を捉えることができるということでもある。そしてそれこそが、彼女たちだからこそ表現できる旋律の境地に他ならない。

バンド名の「虚弱。」にはマイナスのイメージが付きまといがちである。だが、そもそも日常に追われて自分さえも見失いかけた時に、自分という欠片を見つけるヒントが与えられると同時に、自身を再構築させてくれる瞬間とは、どういう状況のことを指すのだろうか?それこそが、きっと傍から見れば「虚弱。」状態に違いない。彼女たちはもしかしたら、そういう時間の大切さを誰よりも理解しているアーティストなのかも知れない。

ちなみに、最後の『Affection』は圧巻だ。初音ミクのヴォーカルに驚嘆しつつも、確かな熱量で伝わってくる感情に触れて、どことなく涙してしまいそうになる。

「虚弱。」とは決して病ではなく、むしろ常日頃から様々な場面で垣間見えてしまう雑多なものを一気に浄化してくれる状態のことなのである。

さあ、何時間でも何日でも構わない。今こそ「虚弱。」の幻想的な世界にどっぷり浸ってみよう。日々の慌ただしさの中で忘れがちな、人間のぬくもりや優しさを感じ直せるきっかけになること請け合いだ。

路考茶
ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop