「あの中で、おれは怪人二十面相の代わりなんだよ。だからああいう表現になる。“海の中に、五芒星が見える”って。面白いよな。章のタイトルに「怪人目崎博士」って出てきちゃうんだもんな。すごいよなー。それも荒俣宏が書いてくれてるんだから。」

絶の島事件/荒俣宏

『著者・出演者』の目崎茂和

―――あと、先生の三重大での存在感を示す重要な文献をここで紹介しておきたいと。

目崎:ん?何かあったかなあ?

―――今更ですけど…荒俣宏の小説『絶の島事件』。先日読ませて頂きました。ついに出てきましたね、怪人目崎博士(笑)。

目崎:あ~それか(笑)。もう20年近く前の話だけどな。元々は『どうまんせいまん奇譚』ってタイトルだったんだけど。

―――あれ、すごいですね。どこまでが本当の先生のことなのか分からないですよ!

目崎:あくまでフィクションだからな(笑)。あの中で、おれは怪人二十面相の代わりなんだよ。だからああいう表現になる。“海の中に、五芒星が見える”って。面白いよな。章のタイトルに「怪人目崎博士」って出てきちゃうんだもんな。すごいよなー。それも荒俣宏が書いてくれてるんだから。

―――関係者なら最高に面白いでしょうね。服装の表現とか、全くいつもの先生と一緒ですもんね。紺のベストとか、笑うとえくぼが…とか(笑)。

目崎:荒俣宏はいつも付き合ってて、今でも年に1、2度会うしな。あれは彼が3時間くらい取材して書いたんだもん。そんなもんで書けちゃうんだなあ。

―――3時間であれだけのものを書けちゃうんですか??

目崎:うんうん。書ける。もちろんその前に鳥羽に行って、鳥羽水族館で打合せしたりね。だから鳥羽水族館の館長たちがみんな実名で出てくる(笑)。あれみんなおれの友達なんだよ。

―――元々は、伊勢鳥羽の観光イベントの一環として、そういうミステリーツアーを組まれた際の企画から派生したものだと聞いていますが。

目崎:そうそう。うん。

―――だから読んでると、話の脈絡とは関係ないところが結構あって、だいたい伊勢の地政学的な特徴と風水談義で盛り上がってるという。それが面白いんですけど(笑)。

目崎:そりゃそうだよ。彼みたいな売れっ子になると、ああいういわゆる「企画モノ」は、編集者が一緒について来て、大半は作っちゃうんだから。

―――え、編集者が書いちゃうんですか?

目崎:そりゃあそうだと思うよ。おれの本だって、編集者がかなり書くもん。編集者がかならず一人付くから。編集者次第で本が出来るんだよな。あれは個人でできるもんじゃないよ。いわゆるベストセラー作家の本なんかでもそうだけど、やっぱり編集者次第なんだよ。編集者が会いに行って、この人の書いた本なら間違いなく10万部は売れるからって、何人も。本っていうのは基本的に編集者が書くもんだから。

―――ハッキリ言っちゃいましたね(笑)。

目崎:ハッキリ言っといたほうがいい。

―――編集者は売れる本を作りたい人たちですからね。

目崎:うんうん。彼らは自分自身の仕事として取り組むからね。ただ、これからの出版は大変だからさ。でも、今だからこそ紙媒体で残したいっていう要望がすごくあるんじゃないかな。どっちみちそれがそのうち電子化されるのは間違いないんだから。

―――いきなりそうはならないんですけどね。じゃあ編集者がいらないかって言ったら、絶対にそんなことはないという。

目崎:編集者は必要だよ。例えば三重大学出版会がやってるやつで、「日本修士論文賞」っていう賞がある。東大出版会とか、いろんな大学が出版会を作ってて、賞を開設している。その中で、博士論文を対象にする賞は結構あるんだけど、三重大出版会は修士論文でやろうという。10年前に、南山行く直前におれも出版会から宣伝を頼まれたんだけど、出版会が修士論文をちゃんと売り出してあげるんだよね。賞を取ったら出版物として出す。

―――院に進んだらみんな書くものですから、応募しないと損ですね!

目崎:だから全国からくるんだよ、応募が。東大から名古屋大学から京都大学から…大学院生がね。みんな社会学系だけどな。自然系はなかなかないけどね。やっぱ本にするって特別な意義があるもんな。自分の書いた文章が雑誌でもなんでもそうだけど、活字になってまったく姿を変えて現れるっていうのはさ、それはもう表現者って言うんじゃないんだけど。残る残らない以前に、やっぱりまず形を作るっていうことが重要で。自分を思想化するってほどではないにせよ、それを人が買って読んでくれるなんて、なあ?こんな名誉なことはないっていう。

―――楽しいですよね。

目崎:うん。そういう意味でもおれは、どういうわけか琉球大学の時代から新聞の連載を沢山頼まれて、それが本になってきたから。これが一番いいの。原稿料二重取り(笑)。

―――そうですよね。新聞に載せる時と、本になった時と。

目崎:そうそうそう。「沖縄の風景」なんていう連載があってさ、これは150回連載したんだよ。写真付きで。で、1回5千円だとしたら、よく考えたら75万もらってるわけじゃない?これで出版社が来て「是非本にしたい」なんて言ったらまた印税が入って。こりゃあいいなと(笑)。だから、有名な作家はみんな新聞に出すっていう話になるんじゃないかな。

―――連載で積み上げていったものを本にするっていう。ウェブ媒体もそういう役割になっていくんだと思います。本を出すための積み上げとして。基本的にやってることは変わらないとも思うんですが、その二重取りの最初の部分のお金が少なくなってますよ、ていうか原稿料はありませんよ、フリーミアムになってますよっていう状況が、ウェブになるとどうしても出てくるんですよね。編集者・著者双方にとって厳しい時代なのかも知れませんが、その分まさに「形を作る」という意味で、誰にでも公平にメディアを作るチャンスがある時代になったのではないかと思うんですよ。

目崎:沖縄時代からいろんな新聞社の記者と付き合ってるから、書き手・話し手としてそれを形にしてくれる人の気持ちってよく分かるよ。お前さんもそうかも知れないし、テレビ番組を作る時もそうなんだろうけど、ディレクターがどういう思いで作ろうとしているのかっていうことを、現場はもっとよく考えたほうがいいよな。せっかく作ったからには、売れたり話題になってほしいわけだし。

―――そういえば先生、三重のクイズ番組にも出演されてたんですよね。

目崎:そうそう。ローカル番組の回答者でな(笑)。だからおれも著者とか出演者としてね、自分の本じゃなくても、さっきの修士論文大賞とか、あっちゃこっちゃにそいつらの仕事を売り込むってことをしてやろうと。編集者が一緒に仕事して喜んでくれるのはさ、たぶんおれがそういうWIN-WINの関係を築こうとしてるからじゃないかな。(続く