前回お話した通り、ストーリー思考には、「越境」「危機」「成長」「勝利」という基本のフレームワークとなる4つのステージが存在します。今回は、私たちがこれからストーリー思考を身に付けていく上で必要不可欠な、これら4つのステージの特徴を詳しく見ていくことにします。ここでは、あなたを主人公とするストーリーを元に考えていきましょう。


■越境

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ストーリーが起動するには、きっかけとなるイベントが必ずあります。そのイベントとはどのようなものでしょうか。それは、あなたが今までの平凡な日常にさよならを告げ、新しい旅や冒険に出るきっかけとなるイベントです。このイベントを通して、あなたはこれまでの日常を離れ、非日常の世界への「越境」を果たすのです。

この「越境」のステージには、「内発的」なケースと「外発的」なケースがあります。自らの意志であなたが自主的に「越境」を決意する場合は「内発的」な越境。一方で、環境的な要因で越境せざるをえない「外発的」越境のケースも当然ながらあります。

たとえば、あなたが新しい資格を取得することを決意し、そのための努力を始めたなら、あなたは「内発的」に越境する道を歩み始めたことになります。

一方で、あなたが突然、子会社への出向を命じられた場合、これはどちらかというと環境的な要因による「外発的」な越境ですね。

あなたが自ら望んだものであろうと、そうでなかろうと、これまでの「日常」に別れを告げ「非日常」である旅や冒険をスタートする。それがストーリーが動き出すきっかけとなる「越境」のステージなのです。


■危機

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さて、いざ「越境」し、あなたが非日常の新しい世界に飛び込むと、初めて経験することの連続になります。さらに予想だにしなかった困難や試練があなたの身に降りかかってきます。

なぜなら、あなたには越境先である新しい非日常の世界で生きていくための経験や知識が圧倒的に不足しているからです。そのため、このステージはあなたのサバイバルをかけた「危機」のステージになります。

映画なら、主人公が次々と困難・苦境に襲われ、見ている側が一番ハラハラさせられる前半の山場にあたるステージです。


■成長

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目の前の壁を一つ一つクリアしていくことであなたは次々と「危機」を乗り越えていきます。さまざまな障害は決して越えられない壁ではなく、むしろそれを利用してあなたはさらに強く高く飛躍できるようになっていきます。

さらに自らの努力、仲間や支援者との出会い、思いがけないヒントの発見などを通して実力をつけ、「成長」を加速していくのが、このステージになります。

「危機」のステージでは、目の前の壁を乗り越えることで精一杯でしたが、このステージに入ると、あなたは少しずつ周りが見渡せるようになり自信もついてきます。

そうした中、「越境」した当初、心に描いていたゴールに到達するための意欲や闘争心が再び沸き上がってくるようになります。

必要なスキルや精神力を手に入れるため、自らをブラッシュアップし、終盤においてゴール達成を強く心に誓う、そうしたステージになります。


■勝利

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はじめの「越境」のステージであなたに起こった変化がどのような結果になったのか、その問いの答えを提示するのが最後の「勝利」のステージです。

「危機」を乗り越えサバイバルし、さらにレベルアップして「成長」したあなたは、当初の目的を達します。冒険物語なら最後の手強い敵をやっつけることかもしれません。ビジネスなら新規クライアントとの大口の契約を決めることかもしれません。

あなたはこのステージにおいて「勝利」をおさめ、それに対する報酬を受け取ることになるのです。


■共通するストーリー構造

いかがでしょうか。前回もお伝えした通り、古今東西の名作と言われる物語のほとんどが、このストーリー構造に当てはまっています。ワンパターンとも言われるはずの内容ですが、なぜ私たちはこのパターンで語られたストーリーに感動させられるのでしょうか。私は、次のような理由だと考えています。

越境→主人公の冒険・旅のきっかけ、理由を知ることで、先が気になるようになる
危機→ピンチの連続にハラハラしているうちに感情移入する
成長→主人公の成長を自分の成長と重ね合わせ、主人公の冒険や旅がうまくいくことを祈るようになる
勝利→主人公の勝利を自分の勝利と重ね合わせ、壮快かつ楽しい気分になり満足する

いわば成功の“鉄板”とも言えるこのストーリー構造。次回はこの流れを組んだストーリー思考を、ビジネスの場面で活用するための具体的な方法をご紹介します。

阿久澤 騰
あくざわのぼる/日本大学芸術学部助手時代に、大学を飛び出し民間企業の広報担当者の道を歩む。現在、ストーリーを軸とした広報・PR・ブランディングを実践中。ブログ「阿久澤 騰 ストーリー思考のススメ