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今回紹介するバンドは「忘れらんねえよ」。ええ、これがバンドの名前だって言うんだから世も末だと。間違いなく酔いが醒めても鮮明に覚えていられる強烈さを醸し出してくれているのだが、アルバム全体を聴いてみると、意外と勢い一辺倒だけではないナイーヴな部分も垣間見せてくれているわけで、何だかんだで結構な秀作なのである。

彼らのプロフィールには「汗と涙と借金まみれ。それでも、世界を変えたいんだ。」とある。また、アルバムに対しては一言「僕らの全てを詰め込みました。どうか、あなたの心に寄り添う大切な一枚になりますように。」…なんだなんだ、普通にいいヤツじゃないか。こりゃ「忘れらんねえよ」!と、こういうことだ。

何もないところから火を起こして狼煙を上げるように、今がダメでも全身全霊を込めて生きているんだという証を、一見がむしゃらに、しかし緻密に掻き鳴らしている。今どき珍しい本能系のバンドなのである。

『Cから始まるABC』の「爆音でチャットモンチーを聴いて涙がぽろぽろ」って、まるで神聖かまってちゃん『ロックンロールは鳴りやまないっ』のロックの初期衝動=ビートルズやセックス・ピストルズを聴き直して、その素晴らしさに気付いた時の大きな感動に限りなく近い。それは、ふがいなかった自分の日常生活に意外なほどの活力を与えてくれる。

日々の慌ただしさに追われて疲れても、ふと見上げた青空や星空につい胸襟を開いて欠片になって溶け込みたくなる。そんな彼らの音楽は、決して卑下もせず凸凹な畦道の中を駆け抜けていくようだ。ブルーハーツ的な春風の匂いなのか、大好きなあの子へ夢中で一直線になれる思春期の情熱すら感じ取れる。

名曲『北極星』は、地道に自転車で大好きなあの子の許へ駆け上る道筋を北極星が照らして…実はあの子の大事な部分が北極星だったなんてあからさまに口にできないだろうが、そんな些細なところにも希望の光を見いだせる彼らは、実は生き続ける事に超ポジティヴなのかもしれない。嘆きやハミングでは終わらせねえよ!?という、本当の歌にしていこうという決意・覚悟が、この若さですでに備わっているとしたら…ということで、まったくあなどれないミュージシャンなのだ。

ちなみに、彼らの所属は杏子や山崎まさよし、元ちとせ他が所属しているあのオフィス・オーガスタである。まさに太っ腹だと、福耳的なコラボは意外としっくりくるかもしれない。それは彼らの音楽のバックボーンがしっかりしているからに他ならない。

彼らの、実は本意ではないひねくれ感…それは真正面からネガティヴに捉えられるものかも知れない。しかし、自分はどうしようもないと思い込んでいる彼らが、現状の壁を見事に吹っ飛ばしている。ダメな事だと分かっていても君は嘘をつく、わざと汚れてみる、それでも前を向いて歩いているのであれば、先に進んでいるのだからいいじゃないか。今求められている「強さ」とは、実はこういうことなのかもしれない。


路考茶
ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop