200808150009o1銀行決算が好調という報道がなされています。確かに、三菱東京UFJFGは2012年3月期経常利益で前期6,400億円から1兆4,700億円と好決算となりました。みずほFGも5,900億から6,500億円、三井住友FGも5,900億円から6,900億円と、日本のメガ金融グループはそろって増益となりました。

各グループ内の中核となる、私たちにもなじみ深い三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行単独でもそろって増益を記録しています。

しかしよく考えてみてください。慢性的な金利低迷が一般常識となっているこのご時世、預金と融資の利鞘で儲ける銀行が増益となるのは、違和感がありませんか?

支払う預金利息の利率は既に引き下げ切っています。その中で融資の利率が低下し続けているのです。つまり支出は減らす余地がないのに、収入は目に見えて減っているのです。銀行はいかに利益を計上したのでしょうか?

その答えは、実は金利低下そのものにあります。

銀行は企業の設備投資が縮小しているため融資先に窮しています。そこで余った金を国債などの債権に投資しています。債権のリターンも金利低下で減っていますが、金利が低下すると債権の価格が上昇します(※)。その売却益を決算に織り込んでいるのです。

※【解説】長期金利が低下すると国債が値上がりするロジック
国債をはじめとする債権は、利率があらかじめ定められているものが多い。実質の利回りは定められた利率と、満期時に帰ってくる額面金額と市場価格の差の合計となる。このため、市場の金利が低下すると、それに合わせ市場価格が上昇する。
例えば、額面金額10,000円、定められた利率1%の国債は、市場金利が2%のときは約9,900円で取引され、市場金利が1%に低下すると約10,000円で取引されることとなる。

2012年3月期の決算資料をみてみると、三菱東京UFJ銀行で経常利益の27%、みずほ銀行で経常利益の28%、三井住友銀行で経常利益の19%が、国債をはじめとする債券の売却等による利益となっています。債権の売却益がなければ3行とも業績は横ばいか、減益となってしまうのです。

銀行の資金運用による利回りは年々低下を続け、いまや利益率はわずか0.1%程度。たとえば資金として100万円を集めて銀行業務を行ったと仮定すると、儲けはわずか1,000円という計算になります。

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■メガバンク、儲けの内訳イメージ

【収入】
・融資先からの利息…6,000円
・有価証券の運用による収益…3,000円
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計 9,000円

【支出】
・預金者への利息支払い…300円
・その他調達先への支払い…700円
・経費…7,000円
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計 8,000円

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危機的に低下した利回りの中で、多額の債権や株式を抱える銀行は、含み益および含み損の顕在化をコントロールしながら、かろうじて決算を組み立てているのが現状です。銀行は毎年、いくら損益を出すか調整しながら売却をしています。ある時は予算達成のため、あるときは利益確定のため、またあるときは税金対策で―。

含み益や含み損は、基本的には売却しない限り決算には反映されません。しかし手持ちの株式や債券の状況は有価証券報告書で調べることができます。あとどれだけ利益を出す余力があるか、どれだけの爆弾を抱えているのか…。気になる方は、間もなく(6月下旬に)公表される各行の有価証券報告書で是非チェックしてみてください。

Hiroumi Kawai
ひろうみかわい/1985年生まれ。名工大・Auckland Grammer School卒。某監査法人に所属する傍ら、プライベートオフィスを運営。現在、会計士の専門性を生かした社会貢献を模索中。愛知陸協所属ランナー。
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