WORLD RECORDS/cero
今年の夏も暑くなりそうだ。街に出ると、かき氷や噴水など、つい涼しげな何かを探し求めてしまうのだが、今回は聴けばたちまち暑苦しさが和らいでくるようなステキなバンドを紹介したいと思う。今年のフジロックにも出演する、Contemporary Exotica Rock Orchestra 略してcero(セロ)だ。

彼らの存在を知ったときは、自分自身、不思議な夢見心地に包まれた。少なくとも今まで体感した事のない音楽の類である。香ばしい焼きとうもろこしの匂いに包まれながら夕暮れに黄昏ながら、または真夜中に皆が寝静まった頃、夜明けを過ぎるまでノンストップで走り続ける夜行列車に一人揺られながら、ずっと耳に触れていたくなるような陶酔感。

この『大停電の夜に』のPVは、原発や計画停電の報道に連日明け暮れる今だからこそ、聴き直してみることをお奨めしたい。インターネットで人がつながり、店舗は24時間電気が灯り、IT革新によってユビキタス社会が実現しつつある。しかし、そこに依存しなくても、ただいつまでもこの夜に酔いしれたい…この感情は一体何だろうか?僕らがこの数十年間、発展してきたと思っていた生活の中で、いつの間にか見失ってきたものを思い出させてくれる一瞬が、この曲に込められているのではないかと思えてならない。特に関西の方、いろんな意味で一聴の価値があると思います。

この『大停電の夜に』も収録されている、昨年1月にリリースされたアルバム『WORLD RECORDS』は僕にとっては THE BOOM 『極東サンバ』以来の、もう脳みそが取り替えられてしまったかのような、何とも心地よい衝撃だった。世界の様々な音楽の要素がクリーミーに溶け合っていて、浅はかにも「ROCK MUSIC が一番カッコイイ」だとか、音楽のジャンルの枠に囚われていた自分の思考の壁をいとも簡単に取っ払ってくれたのである。

時折繰り出されるラップも変にゴツゴツしてなくて、個人的には気持ち良い。まるでフライパンの上のバターみたいに、スムーズに曲の空間の四隅まで流れていく。このフリーキーな姿勢は The Morning Benders (※現在はPOP ETCに改名)にも通じるところがある。そういう意味では、FISHMANS や bonobos の幻影もうっすら映し出されていて、分かる人なら思わずニヤけてしまうところだ。また、以前紹介したサンガツとも重なる部分がある。そう、A Take Away Show は、彼らの音楽がすでに自然の中に溶けて解け合っていることを見事に証明しているのだ。

田舎では相変わらずカエルの鳴き声が夜のメロディを奏でてくれているのだが、そこにも邪魔されることなく、さも初めから佇んでいるかのように、彼らの音楽はこの日本で確かな呼吸を刻み始めたのである。

路考茶
ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop