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先日、イオンが不動産投資信託の設立を検討しているというニュースが報じられました(日本経済新聞2012年6月23日朝刊)。報道によると8月にも設立の予定だとか。イオンはこの件について正式な決定はしていないとのことですが、検討中であることは認めています。今回は企業会計の目線から、もし仮に設立されるとしたら、本当に投資価値があるのかどうかを検討してみたいと思います。

※「不動産投資信託」とは?

投資家や銀行から資金を調達し、不動産を購入、入居者からの家賃収入を原資に投資家への配当を行う金融商品(ファンド)のこと。取引所に上場している商品であれば値上がり益を狙うこともできます。

不動産を購入して家賃収入を得るという原理は現物の不動産投資と同じですが、現物の不動産投資案件を束ねて証券化することで、投資家は投資先を分散することができます。また、物件を丸ごと一軒買う資金がなくとも、少額での投資が可能となります。日本では2001年にスタートした比較的新しい形態の金融商品です。横文字はREIT(リート)。


イオンの真の狙い

報道によると、イオンは店舗の土地建物を設立したファンドへ売却し資金を回収したうえで、引き続き店舗運営のための家賃を支払っていくようです。

イオンにとってのメリットは、ずばり「店舗建設資金の早期回収」です。建設に要した資金を店舗売却によってすぐに回収してしまえば、それをそのまま次の店舗の建設資金にすることが出来るというわけです。海外を含めた積極出店を狙っているようです。

さて、この不動産投資信託、仮に設立されるとしたら、果たして購入に値するものなのでしょうか。ちょっと気が早いかもしれませんが、検討すべきポイントをいくつか考えてみます。


検討ポイント① … 物件の「購入価格」は妥当か?

形式はどうあれ、実質的にイオンがファンドを運営しているとなると、物件の購入価格はイオン側に有利なものとなる危険性があります。もちろん、仮に息のかかった人間がファンドを運営していたとしても、法的には本来の価値を反映した適正な価格で売らなければなりません。ただ、本来の価値より多少上振れした価格であっても、適正な価格と認められる範囲内であれば問題にされることはないでしょう。

不動産の価値の見積り方法に絶対の方法はなく、計算方法によってどうしても幅が出てしまいます。その幅の範囲内であれば、たとえ当事者が考える真の価値と乖離していても適正とみなされます。もともと収益率が10%程度のファンドでは、たとえ1%以内の差であっても、購入価格の差で運用成績は大きく左右されます。


検討ポイント② … 購入物件の「決定方法」は妥当か?

組み込まれる物件が恣意的に決まるのではないか、という懸念もあります。優良物件がきちんとファンドに組み込まれる仕組みになっているかどうかは重要なポイントでしょう。イオンは従来から店舗の売却は行っているため、優良物件は既に他のファンドへ売却済みであると考えられます。

例えばイオン戸田ショッピングセンターは日本リテールファンド投資法人へ売却され、イオン秦野ショッピングセンターはフロンティア不動産投資法人へ売却されています。このようなファンドを自前で設立する際、これら他のファンドとの兼ね合いが問題となります。誰も欲しがらない物件の押し付け先にならないかどうかを、丁寧に見極める必要があるでしょう。


検討ポイント③ … 店舗運営「打ち切り」の可能性は?

イオン設立のファンドに限ったことではありませんが、イオンがファンド保有の物件に入居し続ける保証はあるのか、またどの程度なのかは是非とも確認したいところです。イオンが賃貸契約を打ち切ったら、ただの巨大な産業廃棄物になる可能性もあります。大型のショッピングセンターが入居していた建物を有効活用できる企業は多くないと考えられるため、マンションやオフィスビルへの投資に比べリスクは高いと言えるでしょう。長期の賃貸借契約の有無が確認できると安心です。


やはり新規出店の踏み台なのか

ファンドは上場される見込みということなので、誰でも購入することができるようになるはずです。ただし購入を検討される際には、上記のポイントを確認し、投資家にとって不利な商品でないことを十分に確かめる必要があるでしょう。「イオン」というネームバリューだけで優良ファンドと判断してしまうとすれば、早計と言わざるを得ません。

報道のあった翌営業日の株価の上昇が物語るように、この報道はイオン本体の株主にとって「良いニュース」と判断されているようです。もし「不良物件」の売却が進めば、イオンにとって経営効率のアップが期待できるからです。しかし裏を返せば、今回設立予定のファンドは、イオンのさらなる業績向上の踏み台にされる可能性が高いということでもあります。

購入を検討する場合は、こうした事情を再三考慮したうえで、その妥当性を判断して頂きたいと思います。

Hiroumi Kawai
ひろうみかわい/1985年生まれ。名工大・Auckland Grammer School卒。某監査法人に所属する傍ら、プライベートオフィスを運営。現在、会計士の専門性を生かした社会貢献を模索中。愛知陸協所属ランナー。
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