AERA2012年7月16日号
先日、アエラ7月16日増大号の特集『泥沼離婚の壮絶現場』を見て、思わず仰け反ってしまった。というのも、その内容があまりに衝撃的で、とても他人事とは思えなかったからだ。震災後の不安感や地方都市の活性化策などにも後押しされた地場合コン、いわゆる「街コン」などの活況もあり、近年ますます盛り上がりを見せる「婚活」ブーム。だが、結婚がその後の人生に与える影響は計り知れない。そんな一大決心が、「年齢的な焦り」や「周囲への見栄」などの軽率な理由に振り回されたものだとすれば、働き盛りの私たち世代にとって致命傷になる恐れもある。

今や3組に1組の夫婦が離婚する「離婚大国」日本。年間約25万組も離婚するという。今回のアエラ特集では俳優の高島正伸さん(45)と妻でモデルの美元さん(33)の離婚騒動を引き合いに、離婚が泥沼化してしまった数組の夫婦が紹介されているのだが、私が特に目を引かれたのは、同世代の男性が取り上げられた以下の事例についてである。

妻の実家が介入して混乱

東海地方に暮らす男性(29)も、離婚調停が遅々として進まず、泥沼の一途をたどっている。一因は「妻の実家」だ。

昨年11月、男性の両親を巡る言い争いが原因で妻(28)は自宅を出て、近くにある実家に戻った。妻の両親は娘を溺愛し、同居していた時から、2人のけんかにしばしば介入した。けんかのたびに妻は両親に報告する。すると、2人の間を取り持つふりをして、義父が「我慢と理解」を求めてくる。

別居後も、どうやら妻は両親にあることないことを吹聴し、男性を悪者に仕立てているようだった。妻の実家に電話をかけた時、義父が一言。

「おまえはDVをしてひどいやつだ、許さんぞ」

男性が調停離婚を申し立てると、妻は900万円という法外な慰謝料を要求してきた。しかも、実家という後ろ盾があるからか、職場には嫌がらせの電話をかけてきた。

「社長を出せ!」「お前のところは給料が安いのか!!」

一般に、子どもを連れて別居した妻は、離婚前でも婚姻費用(生活費)を請求できる。

妻も今年4月から離婚が成立するまで月6万円の婚姻費用を請求。男性は金額では同意していないが相手が離婚に応じた時には一括して精算すると返事をしている。このまずるずる離婚を引き延ばされれば、婚姻費用はかさんでいく……。

気がつくと、一円玉大の円形脱毛になっていた。「早く離婚をして、普通の生活がしたいです」

誰しも長い夫婦生活の中では、時にすれ違いが生じることもある。だからこそ、定期的に二人だけで話し合う時間を作り、そうしたズレを補正していこうとすることも、互いを理解し、共に家をつくっていこうとする上では大切な「夫婦の営み」に違いない。

そんな、ある種神聖であるはずの空間に、相手の両親が土足で上がり込んで介入する。勝手に事の良し悪しを采配しようとする――悪夢である。これではかつて一度は夢見たはずの、二人だけの甘い新婚生活など望むべくもないだろう。

読むだけで吐き気をもよおしてしまうような事例だが、この男性の年齢は29歳。決して他人事ではないのだ。

もう一度言おう。これは他人事ではない。

ところで、なぜ私がこの話題について、ここまで「他人事ではない」と連呼しているのかお分かりだろうか……。

それはこの「東海地方に暮らす男性(29)」が、私の10年来の友人だからである。つまり本当に他人事じゃないのだ。そんな馬鹿な。何だこのニュース。

もっと言うと、この男性の「妻(28)」は私の大学時代のサークルの後輩で、同時に妻の友人でもある。

さらにだ。私はこの二人の結婚式に夫婦で出席し、披露宴では友人代表として馴れ初めスピーチまでやらかしてしまっているのだ……。何とも後味の悪い話ではないか。

しかも、アエラ本文には書いていなかったが、この泥沼劇は彼らが結婚式を挙げてからわずか2ヶ月後に始まった出来事なのである。

え、おれのせい?

いや、いやいやいや!そんなはずはない。私は心から彼らの幸せを願って披露宴のスピーチを引き受けたのだから。

ただ……少し本音を言わせてもらうと、私は彼らが式を挙げる直前まで、実は二人の結婚に反対の意思を示していた。たぶん二人のご両親より反対していた。二人は今も離婚裁判の係争中なので詳細をここでお伝えすることはできないが、傍から見て、どうしても上手くいくとは思えなかったのである。

この件について、彼とは結婚前に合間を見つけながら幾度も話し合った。それでもついに結婚すると友が決心したからこそ、私も心を入れ替えて二人を祝福しようと決めたのだ。

式は実に華やかだった。参列者の中で、2か月後の彼らの姿を想像していた者は誰一人としていなかったはずだ。2年後なら今時珍しくもないだろうが、まさか2ヶ月とは…。記事にある通り、「実家の介入」が事態を早めてしまったのはほぼ間違いないだろう。

今回の事例は「男性」目線で書かれているが、一つだけ言えることは、もしどちらか一方が全面的に悪く、それが誰の目から見ても明らかであれば、泥沼離婚に陥ることはないということだ。彼らの名誉に関わることなのであえて本誌の記事として掲載したが、残念ながら、泥沼劇にはどちらにも非があると言わざるを得ない。だからこそ辛く、長いのだ。

私は今も昔も、結婚式とは「苦難を共に乗り越えていくことを喜びとし、二人で手を取り助け合って生きていくことを誓う」ための儀式だと思っている。それは簡潔に言えば、「今までは嫌なことや困ったことがあったら親に相談していただろうけど、これからはお互いが選んだパートナーに相談するんだよ」という意味に違いない。

言い方は悪いが、それを誓った次の日から、ついさっき出て行ったはずの実家の両親にチクり、またチクられているようでは、どうしようもない。「舌の根も乾かぬうちに」とは、まさにこのことである。果たして相手を信頼する気持ちは、最初からあったのだろうか―――。

本誌読者の方々には、結婚生活における「実家の不当な介入」には、是非とも毅然とした態度で臨んで頂きたいものだ。

変 周長
へん・しゅうちょう/1981年愛知県生まれ。本誌編集長、クリエイティブマネジャー。
Twitter ID: @_CAZANA