「結局オンリーワンでいくことなんだよな…人生は。だからってそれは「こんなこと誰もできねぇ」とか言いながら無理をするっていうことじゃなくて、とにかくまずは誰もやってないことを見つけるんだよ。で、隙間だろうが重箱の角だろうが何でもいいから頑張っていれば、どうしたって新しく芽が出ちゃうんだから。」

天空の世界神話/目崎茂和

『キングオブジョブ』目崎茂和

―――川のつくりを研究し始めた先生が、今の風水学や神話学に至るまでは、実は全部つながっていたんですね。川の研究をやり始めたら、ここに行かざるを得なかったという必然が、ようやく理解できたような気がします。

目崎:全部つながってる。でもよく考えてみたら、なんでおれは地理学者になったんだろうな。

―――えっ?

目崎:沖縄にいたからサンゴ礁を研究していたけど、次に三重に行ってからは祭り学者になっただろ?南山では、神話学者として比較神話の論文を頑張って書いたりして。南山大学って、元来は神話学のメッカだからさ。二代目の学長は有名な神話学者だったわけで。だから、南山に来たってことがおれの中で徐々に意識化されて、神話学の研究を始めることになったのかもしれない。でも、どんな学問やってたって、いつでもいろんな大学の先生が、おれの話が聞きたいって来てくれてな。

―――どこにいてもその場所の特性を理解して自分のものにしてしまう…まさにそれこそが地理学であり、先生の生き方そのものなんでしょうね。先生のそういうキャリアの作り方をこのインタビューで伝道したかったんですよ。「キングオブジョブ」の異名を持つ先生の。

目崎:そう、新聞記者にいつも言われてるんだよ。「先生みたいないい職業はないですね」って。自分の好きなことやって、世界中回って、全部国が金出してくれて、しかもそれで給料まで貰って(笑)

―――風水の考え方と同じなのかもしれないですね。その場の環境を受け入れて初めて第一人者になる、という。第一人者になるにはどうすればいいのかを、先生はいつも考えて来られたんじゃないかと。

目崎:第一人者になるっていうこと以前に、結局オンリーワンでいくことなんだよな…人生は。だからってそれは「こんなこと誰もできねぇ」とか言いながら無理をするっていうことじゃなくて、とにかくまずは誰もやってないことを見つけるんだよ。で、隙間だろうが重箱の角だろうが何でもいいから頑張っていれば、どうしたって新しく芽が出ちゃうんだから。

―――そうですよね。どんな職場でも業界でも。

目崎:絶対そうだよ。どんな世界でも、最初は「変わってるね」とか「珍しいね」とかいう評価でもいいから、とにかくオンリーワンの自分で行けるだけ行ってみようよ。それが知らない間に自分の土壌になって、やがて山になっていくわけだから。そうすればもうこっちのもんだよ。それまでに自分というオリジナルな土壌にいろいろな養分が含有されているから、自分の根っこから新たな仕事を掘り出したりもできるようになる。

―――最近掘り出されてきた一番新しい仕事はどんな感じですか?

目崎:実はここんところ、「震災論」を書いてくれって話がいくつかあったんだよ。でも、それは書けなかったね…怖くて。神話をやっちゃったからな。神話では、天災は天罰だって言われてるから。

―――以前、東京都の石原都知事も同様の発言をされていましたね。

目崎:そうそう。あれは、東洋の基本的な精神のことなんだよな。天罰っていうのはつまり、自分に下した罰のことなんだよ。起こってしまったそれを、自分がどうやって受け止めるかっていう。それは例えば親を亡くしたとか…本当に被災した人にとってはしんどい話なんだけど、結局立ち直ろうって時に、「たまたま自分がここに住んだことが悪かったんだ」とか、東洋人が諦めの境地に至るためのひとつの術であり、智慧なんだよな。だから極めて前向きな、未来志向を促す意味で「天災は天罰だ」と。そういう使われ方なんだよ、元々は。

―――今回は地震の後で原発事故が絡んでいるから、さらにややこしいんですけどね。

目崎:だから、今回の場合はある意味で、日本人全員が天罰を受けたという解釈になる。そうすると、それまでの環境問題だとか政治のあり方だとか…全部そういうものに押し付けちゃってもいいけど、一方ではそういう諸問題を自分ごとに変えていくチャンスでもあるわけだよ。大学だって、あれ以来変わらざるを得なくなったわけで。

―――震災で大学が?

目崎:うん。今、学会はものすごく変わってるよ。全ての学会が。この事実をどう受け止めて、どう変えていくのかっていうね。今後、この問題を抜きにして日本人が仕事を選ぶなんてことはあり得なくなるんだろうな。

―――でも、これまでの学問で培われてきた基本的な原理原則は変わらないはずですよね。大学が、学会が変わるってどういうことなんでしょうか?

目崎:「なぜこれをやって、これをやらなかったのか」っていう検証がね。今までと全然違うわけだよ…論調が。一夜にして変わった。今回の震災を、よく太平洋戦争の直後と同じイメージに捉えたりするだろ?

―――そうですね。「戦後」的な言い方をしますよね。

目崎:同じなんだよ、やってることが。今の原発の問題でもさ、「どうして日本人は被爆体験があるのに原発を広めたのか」なんて話を今更やっている。だってあの頃はさ、みんな原発でいい生活になるだろうっていうイメージだけでやってたはずだよ。新聞だって何だって全部そうだった。それがまた180度変わっちゃって…なあ。

―――その一方で、川から始まった先生の研究は、180度変わり続けたように見せながら、実は全部つながっていたという。

目崎:そうだよな…やっぱり人生は大河ドラマなんだよ。人生という川の中で色々考えていればさ、どんな立場にいようがどんな環境にいようが、結局はごく自然に流れていくしかない。そうしてだんだん、だんだんと自分の望む方へと変わっていくんだよ。知らない間に、それが意識化されていく。仕事をしながらこういうメディアを作り始めたお前さんだってそうかもしれないし、みんなそうだと思うよ。結婚しようが何しようがさ。(了)