おろしポン酢牛丼/すき家
お待たせしました(?)。久し振りの侍ランチです。仕事の都合で長期の現場に入ったりしてしまうと、近くに地場の定食屋1件しかなくて、そこで毎日違うメニューを頼む生活になってしまうこともあるんですね。そういう日々もたまには乙なものですが、私はやっぱりチェーン店が大好きです。死ぬほど好きです。本コーナー「サムライ*ランチ」はチェーン店を中心とした日本人のリアルグルメをたしなむ連載です。

さて今回はついに「王者」の登場です。2010年に売上高でマクドナルドを抜き、外食産業の最大手に君臨したゼンショー。その中核店舗である牛丼のすき家。これまで出てこなかったのが不思議なくらいですが、今日まで本誌への掲載が遅れたのには理由がありました。

分からん…分からんかったのですよ…スタンダードといえるメニューが。

競合である吉野家・松屋と比べても、メニュー・トッピング共にずば抜けた品数を誇るすき家。とは言え牛丼チェーンなのだから、スタンダードにこだわるなら、とりあえず基本である牛丼の並を選べばいいじゃんと簡単に思うなかれ。

旦那…そんなことは百も承知ですよ。もう何回、すき家の牛丼の並を食ったことか…。

しかし、何度も食べた結論だからこそ、あえて言わせて頂きたい。すき家の牛丼に限って、何も乗せてない「牛丼」は、ここで毎回取り上げている「スタンダード」の考え方ではない!

これは以前、カレーハウスCoCo壱番屋のポークカレーを語った時と同じ構図だと考えられます。つまり、もはやすき家の牛丼の味は「トッピングありきの牛丼」になっているのではないか…ということです。

他店よりやや醤油が強めの味付け、ご飯の意外なほどの主張のなさ…ハッキリ言いましょう。2012年現在、確かに牛丼単体の味では競合である吉野家・松屋に溝を空けられている感が否めません。昔はこれほどの差を感じなかったのですが…やはり近年売上高でマクドナルドを抜くという快挙を成し遂げたと同時に、店舗網の急拡大によるクオリティ障害が早くも現れたのではと思わずにはいられなかったのです。

しかし正直、当時の私はそれでも良かったのです。というのも約二年前、私にとって、マクドナルドを抜いた頃のすき家のスタンダードは「カレー」だったのだから。

実はすき家は、牛丼とカレーの二枚看板だということはご存知でしょうか。もともとカレーには一家言ある店だったのです。
すき家
そんな中でも、特に2007年~2008年頃のすき家のカレーは神掛かっていました。300円台にも関わらず、人参やじゃがいもも豊富に入った具だくさん。コクと辛さも絶妙で、要はあまりにも美味すぎたのです。何だか文章が心なしか冷静さを失っていますが、それくらい、あの頃のすき家は、牛丼なんて食ってる場合じゃなかった。

しかしそれも、ある日200円台の「スパイシーカレー」なるものに代わって状況が一変。ただ胡椒辛いだけでコクがない上っ面なルーが何とも味気無く、かくして私の「すき家カレー100年の恋」は終わりを告げたのでした。

「100円くらい足したっていい。以前のお前に戻ってくれないか」「このままじゃお前と別れることになる。それでもいいのか…」と一人でつぶやき続けたのも束の間、一年経たないうちにすき家は再度カレーの全面リニューアルに踏み込みました。やはり「スパイシーカレー」は相当に不評だったのでしょう。しかし、残念ながら、それから今日に至るまで、すき家のカレーが当時のクオリティまで回復したことはありません。最近またリニューアルしたらしいので食べてみる価値はあるかも知れませんが…やはり一度別れた女とは上手く行かないものなのでしょうか。

閑話休題。

とにかく牛丼業界における行き過ぎた低価格路線への対抗措置的な意味合いもあったのか、私がカレーにうつつを抜かしている間に、いつの間にか「トッピングありき」の牛丼に舵を切っていたすき家。「ねぎ玉」「わさび山かけ」「3種のチーズ」など、個性的なトッピングメニューが並ぶ中、すき家の牛丼の特性を知り尽くしてなければ、およそ考えられないだろう奇跡の組合せがこの「おろしポン酢牛丼」だと言っても決して過言ではありません。

少し濃い味の牛肉の味付けが、さっぱり大根おろしとポン酢の絶妙な分量により口の中で混然一体と溶け合う様は、まさにこれこそがすき家牛丼の真骨頂と呼ぶに相応しいクオリティ。これを食べさせるためにわざと濃口仕様なのではないかと思わず疑ってしまうほどです。ご飯との相性も抜群で、うっかり肉だけ食べ過ぎても最後までおろしポン酢の味を楽しめます。オススメです。

近年、並よりご飯が少な目で肉1.5倍の「中盛」を開発するも、値段が大盛と同じ値段であることからネットユーザーから「バカか」と鼻で笑われるなど、トップに君臨するが故の迷走も多かったすき家(ちなみに中盛は今も販売中)。業界最高レベルのチャレンジ精神とメニュー開発力を有するその勢いで、今後も話題性のある商品でサラリーマンの胃袋を楽しませて欲しいものです。

それでは今日も、手と手を合わせて、いただきます。