ついに国内で「木造」の大型商業施設ができるそうです。どういうことかというと、シート張りとか内装デザインで上っ面の木目調ですよナチュラルでしょ、というのではなく、梁と柱…つまり構造躯体に「木」を使った、本当の「木造建築」ということです。やってくれました竹中工務店。さすが自社の建築物を「作品」と言ってはばからない、国内屈指の技術力を誇るスパゼネさんです。これはすごい。

美しい「燃えない木造」 横浜に国内初の大型商業施設

 横浜市にある港北ニュータウンの中心部、市営地下鉄センター南駅前に珍しい光景が現れた。大規模なコンクリート躯体(建物の骨組み)の上にクレーンで建てられていく梁(はり)と柱は、どう見ても「木」なのだ。聞けばこれは集成材(複数の木材を貼り合わせた部材)、つまり本当に木材で、完成すると国内初の木造耐火構造を採用した大型商業施設になる。

サウスウッド(建設中)


■どっしりとした力感をたたえる工事風景

 2013年秋にオープン予定の大型商業施設「サウスウッド」の新築工事現場は、駅前広場に面しており、多くの人々がかっ歩するにぎわいの中にある。その木質の部材は遠目にもよく目立つ。そして、連続した構造の連なりはとても美しい。近づいてみると、どっしりとした力感をたたえている。

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木の梁と柱の連なりがとても美しい(資料:竹中工務店)

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グレー部分が鉄筋コンクリート造、着色部が燃エンウッドによる木造(資料:竹中工務店)

 工事現場内に入らせてもらった。施工を担当する竹中工務店の沖田哲雄作業所長が説明してくれ、梁と柱の組み立て方や場内の様子を見せてもらった。

 1階と、2階以上のコア部分は鉄筋コンクリート造で、2階以上のコア外部が大断面耐火集成材「燃エンウッド」による木造だ。この集成材は竹中工務店が開発した。

(中略)

■260度以下で鎮火する木の性質を利用

燃エンウッド
燃エンウッドの柱と梁の断面図(資料:竹中工務店)

 燃エンウッドとは、竹中工務店が1時間耐火の集成材として開発した木造の構造材だ。2011年12月にこのプロジェクトに必要な断面で国土交通大臣認定を取得した。構造上必要な断面寸法のカラマツを使った荷重支持部のまわりを、厚さ25mmのモルタルによる燃え止まり層、さらにそのまわりを厚さ60mmのカラマツの燃えしろ層で覆っている。

 火災時には、元々断熱性の高い木材による燃えしろ層が燃焼・炭化することでさらに断熱効果を発揮し、燃え止まり層が熱を吸収して荷重支持部を保護する。木は260度を下回ると自然に燃え止まるという性質を捉えた仕組みだ。

 ハイブリッド集成材と言われている鉄骨内蔵型の耐火集成材は、木材としての見た目は表現できるが、構造としては鉄骨造だ。木の構造材のまわりを耐火被覆で覆ったメンブレン型と言われるものは、構造としては木造であるが木の肌が見えなくなってしまう。それに対し、燃え止まり被覆型である燃エンウッドは、構造として木造であり、かつ外観もまさしく木材だ。

 モルタルと木材は接着剤が効かないので、燃え止まり層はモルタルと木材を交互に配置し、集成材として一体化している。所定の断熱効果が得られるようサイズなどを試行して設計された燃えしろ層断面だ


■建築主が環境配慮型の建物を求めていた

 耐火建築物では木造禁止であったものが、2000年に建築基準法改正によって性能規定化になり、木造耐火建築の実現が法的に可能になった。

 竹中工務店では2003年頃から基礎的な研究を手掛け、2008年頃には小断面部材の燃エンウッドの開発を完了していた。当時はまだ社会的な気運が醸成されていなかったが、2010年10月に「公共建築物等の木材利用促進法」が施行されたことで、燃エンウッドの商品化に向けた活動を展開し始めた。

 それと前後して同社は、サウスウッドの設計を手掛けるE.P.A環境変換装置建築研究所(東京都目黒区)から燃エンウッド技術についてヒアリングを受け、2011年6月にサウスウッドへの技術提案依頼を引き受けた。具体的なプロジェクトを得て、サウスウッドで必要になる大断面燃エンウッドの大臣認定取得に向けて走り出したのだ。

 そして前述のとおり、竹中工務店は2011年12月に大臣認定を取得した。同社先進構造エンジニアリング本部特殊架構グループの五十嵐信哉リーダーは今後の展開について、「認定は樹種ごと、断面サイズ(最小と最大の範囲)ごとに取得しなければならない。これからは樹種の拡張を目指していきたい」と話す。各地の産材を燃エンウッドに使えるようにすることで、普及に努めたいと言う。
日本経済新聞 2013/5/1 7:00より一部抜粋>

今までは木造だと耐火建築物の認可が取れなかったので、ビルとか商業施設の構造に木は使えなかったんですね。だから現行法の下では、これまで法隆寺や清水寺のような大型木造建築を作ることが事実上できませんでした。

建築基準法の改正と、この新技術が実用化されたことで、木造高層ビルの誕生も夢ではなくなったのかもしれません。

工期は9月末までで、2013年秋に商業施設がオープンする予定とのこと。オープンしたらぜひ港北ニュータウンに行ってみたいと思います。

サウスウッド(完成予想パース)
完成予想パース(資料:CIA inc / the brand architect group)