星海社新書・初代編集長の柿内芳文氏が「卒業」されることを知り、一瞬目を疑った。でも、近いうちにそうなるんじゃないかという気はずっとしていた。氏はベストセラーを連発していながら、ずっと「本を作らない編集者を目指している」と公言してはばからなかったからだ。

柿内氏は、僕が勝手にライバル視している人物である。面識なんかない。なくたっていい。妄想でいい。クリエイティブディレクターの箭内道彦氏が常々「ライバルは他業界に持つべし」とおっしゃっているのを律儀に守っているからこうなっているのである。

著者と作品にありったけの体重をかけて挑み、売るためには手段を選ばない(?)その姿勢は、他業界と言えども…いや、他業界だからこそ嫉妬に値する豪腕。

特に、光文社時代の氏の仕事はある意味で神掛かっていたとさえいえる。中でも「若者はなぜ3年でやめるのか?(城繁幸)」と「ウェブはバカと暇人のもの(中川淳一郎)」は秀逸。「ついに著者だけでなく、編者で本を選ぶ時代が来た!」と本気で思わせてくれた。

でも、近年はまさに、敬愛する常見氏の指摘の通りだと思う。自分も素人ながら、星海社新書は分かり易過ぎる(ように見える)ために、"新書を読むような" 若い世代の「背伸びしたい願望」に応えられていないんじゃないか?という懸念をずっと持っていたのだ。

それでも「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか(小暮太一)」は近年稀に見る良書で、今でも人に薦めまくっている。あれこそ学生時代に読んでおきたかった。でも学生の頃の自分じゃ、たぶん到底理解できなかったんだろう内容。簡潔明瞭だが、味わい深い。正直、あの本がなかったら僕の3回目の転職はなかったかもしれない。そのくらい衝撃的な書。売れて当然。当然と思わせる力量。

いずれにせよ、同世代の先頭を行くすばらしい編集者であることは間違いない。
これからも "いちファン" として、柿内氏の今後の活動に注目したい。

いやー、それにしても、常見氏が時々ぶっ書く「檄文」は、毎度しびれるなあ。かっこよすぎる。友人への愛に溢れている。きっと本気で、本音で生きているから、こういう文章になるのだろう。

柿内氏の仕事にも十分嫉妬していたが、それ以上に今回、この柿内氏・常見氏・中川氏の関係…言うなれば「鉄のトライアングル」に嫉妬したわ。目頭が熱くなるようなやり取り…。

このくらいの関係性を、きちんと同業に持ち込まないといけない。

「憧れられる業界」というのは、きっとこういうことだから。