「芸能人の誰々とヤッた、モデルの誰々とヤッた、すごいだろ!っていうのはクリエイティブを生業としている者として、どう考えてもカッコ悪いと。だから僕は黒子として身分をわきまえようと。それが例えば、私財を投じて何か作る芸術家ならいいですよ。でも、僕にはスポンサーがいて、お客様がいる。商業デザイナーっていう立場である限り、自分が前に出るのはちょっと違うんじゃない?って」

古澤健太5

渋谷クリエイティブの先駆者たち

―――渋谷で仕事をしていく上で、外しちゃいけないことってありますか?

古澤:渋谷に限ったことではないかも知れませんが、やっぱり人心を裏切らないことですね。僕は基本的にはいつも筋を必ず通すつもりで来ましたけど、相手の捉え方もあって…実際はこれまでに2回ぐらい、怒らせちゃいけない人を怒らせたこともありましたね…(笑)

―――ピンチですね…。そういう時に、どう乗り切られたんでしょうか?

古澤:うーん、まだ乗り切れてないのかもしれません(笑) というのも、自分の中では今でも正しいと思っている部分もあって。僕もよく筋とか言ってますけど、そういう場合って、正直、自分の中で未だに「何がいけなかったんだろう」って思うようなこともあるんですよね。そのまま今日まで分かっていないこともありますし、「これはいけなかったな」と気付いて、許してくださった方もいらっしゃいますし。

―――ビジネスですから、怒らせたけど結果的に前より仲良くなる…みたいなことも?

古澤:もちろん。でも、結局こちらの心掛け次第でしょうね。逃げたらそこで終わりです。

―――月並みな質問ですが…尊敬する人物とかいらっしゃいますか?

古澤:遠い所だと、やっぱりイチローさんです。ルーチンワークの大切さを体現なさってるので。

―――確かにルーティンの神…(笑) あのモチベーションこそ仕事には必要ですよね!

古澤:あと、近いところだとVANQUISHの石川涼さんでしょうか。さっき言ったココルルのK社長はレディースのマーケットを切り開いて逆転しちゃったわけですけど、この石川涼さんはメンズマーケットの開拓者です。当時のVANQUISHって、例えて言えば、渋谷109でメンズコスメを売ろうとしたようなもんですよ。

―――普通だったらまず成功しない…。

古澤:今からコスメやって資生堂に勝てますか?勝てないですよね。でもあの人はそれに近いようなことをやって、どんどんイノベーションしちゃった。だから僕にとってはKさんの背中とちょっと被るんですよね。

―――レディースよりも全然難しそうなイメージが。

古澤:だと思うんですよね。どんどんブランドが淘汰される中で生き残って、失敗を恐れず結果を残す。そして人としても変わらず。僕の理想像ですね。体型も変わらないですし(笑)

―――Kさんと石川さんが、まさに今の渋谷の「開拓世代」だったと?

古澤:そうです。だから僕なんかは、その開拓世代の背中を真後ろで見ることができたんですよね。まずレディースをKさんが開拓して、カルチャーを変えて、今の渋谷の原風景を変えた。その後、石川涼さんがその流れをメンズでさらに掘り下げて、現在の渋谷を作っちゃったという。少なくとも、ファッション業界の常識を変えちゃった。普通こういう話なら、サイバーエージェントの藤田さんとかの名前がまず最初に上がるんでしょうけど…。

―――藤田さんはウェブや広告の分野の人ですから、"渋谷の" 文化となるとちょっと違うのかもしれませんね。

古澤:少なくとも土着文化ではないですよね。だからそういう意味で、この二人が今現在のクリエイティブにおける渋谷カルチャーの先駆者、パイオニアだと僕は思っています。あと、土着文化という意味ではやっぱり植竹ヒロム君でしょうか。彼もずっと渋谷で頑張ってる僕と同い歳の戦友です。

―――渋谷の土着文化って、意外と今まで語られてこなかったんじゃないかと思うんですよ。でもそれを語れる方もそういないわけで。古澤さん、今まで大手の取材とか全部断られてたのに、どうして今回受けて頂けたんでしょうか?しかもうちのような最弱ブログマガジンに…ある意味、一番聞きたいことでもあったんですけど。

古澤:さっきの話ですよね。芸能人の誰々とヤッた、モデルの誰々とヤッた、すごいだろ!っていうのはクリエイティブを生業としている者として、どう考えてもカッコ悪いと。だから僕は黒子として身分をわきまえようと。それが例えば、私財を投じて何か作る芸術家ならいいですよ。でも、僕にはスポンサーがいて、お客様がいる。商業デザイナーっていう立場である限り、自分が前に出るのはちょっと違うんじゃない?ってずっと思ってたんですよね。

―――じゃあ、どうして…?

古澤:もちろん今回は人の縁が一番大きいですけど、カザーナっていうタイトルがキャッチーだったのと、誌面の端々に反骨精神を感じるので、シンパシーを感じてしまったんですね。この媒体なら僕が伝えたい "裏方の美学" をちゃんと伝えてくれるだろうって。

―――そう言って頂けると感無量です。細々とやってきて良かった(笑)

古澤:僕はアーティストじゃない。だから、相手が作りたいものを実現してあげたいっていう。ただそれだけですよね。黒子の商売ですよ。でも、それが一番カッコいいなって思ってやってます。そういう自分の小さな美学…裏方の美学が少しでも伝わったらいいなと。誰かが自分の仕事に共感してくれたら嬉しいじゃないですか、やっぱり。(了)
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