2014-07-20 151
愛知県稲沢市は名古屋市中心部から電車で15分ほどの距離にある、人口15万人程度の中規模都市だ。駅前や幹線道路沿いに市街地が広がる他は、多くが農地という典型的な郊外型ベッドタウンである。日本中に散見される同規模の都市と変わらず、昼間は若者で賑わうということもなく、今や大都市に労働力を供給する街という位置付けでしかない。

また、全国的な知名度も決して高くなく、有名なものといえば年に一度開催される「国府宮はだかまつり」と、全国一位の集荷量を誇る植木(苗木)や銀杏だが、そうしたことが人の口の端にのぼることは、残念ながらほとんどないと言っていい。つまりどう頑張っても、ありがちな地方都市という抗いがたいイメージは、当分拭えそうにもない―――。

稲沢市民に思わず怒られてしまいそうな見出しだが、そんな稲沢になぜ本誌が今、羨望と驚愕の眼差しを向けているのか。それは、そうした街のイメージからはあまりにもかけ離れた、一人の男の存在に気付いてしまったからということに尽きる。

言い換えれば、「そんなありふれた街から、まさかあれほど規格外の男が輩出されるとは、一体誰が想像しただろうか?」ということである。

ロックミュージシャン、E.NAZAWA(イー・ナザワ)。音楽の力で地元、稲沢市を変えるべく、今日もステージに立ち続ける。まさに地方回帰の時代に相応しい、次世代のスーパースターだ。

ナザワは生まれ育った稲沢と同様に、かつて何もないところから音楽活動を開始した。いや、実際には稲沢に何もなかったわけではない。若者にとっては何もないように “見えた” 稲沢と同じく、その頃のナザワも傍から見れば、何の才能もないように “見えた” 。どこにでもいる一人の平凡な男に違いなかった。

だが、ナザワはそんなナザワ自身に苛立ちながらも、同時に誰よりもナザワの才能を信じていた。

「ナザワの人生、これでジ・エンド?」「結局ナザワには何もなかったの?」「ナザワは口だけの男だった?」「ナザワは普通の男?エニタイム?エニウェイ?」

自問自答の日々の中で、ナザワは自らの故郷、稲沢の原風景と自分を重ね合わせていた。ナザワは、何もないと言われ、若者に見捨てられかけていたこの街を、誰よりも愛していた。自分の境遇と稲沢の現状が瓜二つであることに気付いた時から、ナザワは自分の才能を磨き続けると共に、稲沢の魅力をオーディエンスに伝えてきた。誰に頼まれたわけでもない。ナザワは自分を信じた。いや、信じたかった。だからこそ、故郷・稲沢のポテンシャルを信じていた。もし稲沢が本当に何もない街なら、ナザワも所詮、何もない男なんだと―――。

転機は、そんな中で突如訪れた。

今からちょうど2年前の夏、稲沢の若者が集まってはじまった音楽とアートの祭典「ZAWA友FESTA」にナザワは注目していた。このイベントが権威や大組織に頼ることなく、20代~30代の若い世代の手で自力運営されていることを知ったナザワは、これからはローカルこそがロックであり、それを体現するには、自らリードヴォーカルを超えたリードローカルへの挑戦が必要だと感じていた。

そしてその開催直前。一本の電話がナザワ事務所に鳴り響く。なんとNPO法人「ZAWA友FESTA実行委員会」から、第一回「ZAWA友FESTA」ステージイベントの目玉として、E.NAZAWA名義でのワンマンライブが打診されたのだ。

果たして、運命の歯車は回り始めた。そこから先は、誰もがご存知のとおりである。

カザーナ-CAZANA、今回の特集は、稲沢が生んだスーパースターE.NAZAWAの “今” を捉えたスペシャルインタビューを一挙掲載。ナザワが自ら「執着している」と言って憚らないキーワード「音楽」「歴史」「都市」「政治」「若者」とは何を意味するのか?そしてついに明かされるナザワの過去。稲沢で過ごした空白の少年時代。ナザワは何を感じ、どう動き、チャンスを手にしたのか?その全てが語られた10,000字の熱波。「嘘みたいな、こんな時代だからこそね、ワンモア、みんな動きはじめなきゃダメなんですよ」ナザワの強烈なキャラクター、そしてメッセージを今こそ胸に刻んで欲しい。(続く
>> 続きを読む