常夜灯
一年ぶりに寄稿させていただきます、路考茶です。皆さん、お元気でしたか?
以前このコラムで紹介したKEYTALKがいつの間にかメジャーデビューし、先日CDTVにもニューカマーバンドとして紹介されていましたね。これからも、彼らのように大きく成長して羽ばたいていってほしいバンドを先取りして紹介していければと思っています。

さて、最近は新しく出てくるバンドのネーミングがかなり個性的になってきている傾向があり面白いので、その話題から始めたいと思います。たとえばバンド名が文章になっていたり、曲のタイトルみたいだったり、今までになく紛らわしい…いや、斬新なネーミングに驚かされることが多いのです。

例えば『森は生きている』『片想い』『さよなら、また今度ね』『コンテンポラリーな生活』『水曜日のカンパネラ』etc...、多彩なネーミングが並んでいます。これが全て曲のタイトルではなくバンド名だというのが恐ろしいですね。

その中でも、名実ともに異彩を放っているなぁと思うバンドが『失敗しない生き方』です。

「ゆとり世代か!」と思わずツッコんでしまいそうなネーミングが今時な感じです。若い彼らが突き進む道は全く迷いもなく開けていると思いきや、「失敗しない生き方」って…。思わず人生の先輩方から「人生は常に失敗の連続だよッ!」と鋭い指摘が入りそうですが、のらりくらりと奔放に歩いているように見えて、実はしたたかさと戦略的な匂いが感じられるその立ち振る舞いには、ある種の頼もしさすら覚えます。

実際、彼らのプロフィールには『「なんとなく、NO」と言える人を目指し、スーパーマーケットのBGM向きの軽快な音楽を地下や路上で演奏する。』とあり、まんざらではありません。

昨年、あるサンプルのコンピレーションアルバムに、彼らの『月と南極』が収録されたのですが、この曲の吸引力たるや凄まじく、ダイソンの掃除機を遥かに超え、ブラックホールを呑み込んでしまうほどの、まさに宇宙規模の魔力を秘めた一曲と言っていいと思います。万年モラトリアム感が満載の傑作です。



この曲のサックスの音色は、真夜中の高速を鮮やかなイルミネーションとともに駆け抜けていくような光景を想起させます。月と南極というタイトルとはまるでかけ離れてしまうのですが、完全にこういうシティポップ…いや、彼らが提唱する「ベッドタウンポップ」という感覚がたまらなく好きになります。

これまた、ボーカルの蛭田桃子さんが妖艶な雰囲気を醸し出すにとどまらず、この音楽が流れている時間空間を一気に支配していくのですよ。ああ~、ジャケ写などを見ても、すっかり彼女の妖艶さに魅了されてしまうんですよねえ。ゆるゆるな世界なのに、いやゆるゆるだからこそ、非常に惚れております。完全に彼らの戦略にハマってしまっております。

『CITY(都市)ではなく、僕らはTOWN(街)で育ったんだ』

CAZANAのコンセプト「次世代の都市空間デザインを考える」と矛盾が出てきやしないかと心配ではありますが、『失敗しない生き方』の「ベッドタウンポップミュージック」のコンセプトには、私も郊外(むしろ田舎が妥当ですが…)に住んでいるので大賛成なのです。

日本の音楽を全てミリオンヒットのように均一化するのではなく、自分たちが育った環境に応じて、ある意味地方分権のごとく各地域の特色を出しながら音楽が醸成されていくのが、これからの日本の音楽の望ましい姿ではないかなと思っています。究極的に言えば、日本人皆が必ずしも知っておかなくてもよい、十人十色な音楽が各々住み慣れた街で溢れているその多様性を育てていくと同時に、許容していく時代に突入しているのかもしれません。

そんな彼らが、昨年末に発売されたカーネーショントリビュートに『グレイト・ノスタルジア』という曲で参加しています。森高千里、岡村康幸、曽我部恵一など他の参加するアーティストに力負けすることなく、ここでも異彩と魅力を存分に放っています。そして、1月22日に1st Album『常夜灯』をリリース。今宵は彼らの "グレイト・ノスタルジア" に誘われてみてはいかがでしょうか?



路考茶
ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop
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