稲沢ロックフェス2012
ライヴフェスは、言うまでもなく新しいバンドとの出会いができる最良の機会である。最近は温泉や高原、地歌舞伎の舞台など、趣向を凝らしたフェスも増えてきている昨今であるが、今回は "軽音楽の振興" といった明確なコンセプトを持って一から興されたという、稲沢ロックフェスを取り挙げたいと思う。

略して「稲ロック」…このロゴが何とも切れ味鋭く、閃光ライオットみたく稲妻のような勢いを感じさせてくれる。第3回を迎えるこのフェスは、昨年の11月に約1300人を収容できる稲沢市民会館大ホールで行われた。僕はそこで、13時~16時という限られた時間の中で、未知のロックフェスを体感することになった。

僕の地元から長鉄ぶうめらんずも出演していたが、これには残念ながら間に合わず、Flip・Flopというアコースティック・デュオから観ることになった。ドアを開けるとOasis『Don’t Look Back In Anger』のカバーがやさしく出迎えてくれて、一時の清涼感と名曲の素晴らしさを噛みしめるように味わうことができた。

実に様々なタイプのバンドが、百花繚乱といわんばかりにステージを彩り躍動していた。全体としてはハードロック・メタルあたりが多いという印象であったが、ジャンルが異なれど皆が音楽…ロックをステージ上で体現することで、音楽が人間を能動的に突き動かしていき、やがて誰かの心に響いて次へのエネルギーや勇気につながっていくその過程が一望できる稀有なイベントだった。

人々がハッピーになれるループの仕方、それこそがやがて「音楽は世代を超えて、街の元気の原点となる」ところに至るのだと、逆に音楽の身近で偉大な効用を教えてもらった気がする。その意味で、特に印象的であったバンドが MAGASTA BAND である。もともと名古屋のシンガーソングライター Maga sta Shima さんを中心としたバンドで、容姿は力強い長渕さんっぽい感じではあるけれど、非常に多彩で決して錆び付かず、むしろ磨くほどに光り輝くダイヤモンドのようなフレッシュな楽曲が揃っていて、聴き進めるほどにすっかり虜になっていた。何でこの名曲が世に広まらないのか首をかしげるくらい高い完成度を持つバンドである。改めてYoutubeで拝聴させていただいたが、会場で目の前で体感した熱狂と興奮が今にも蘇ってきて、武者震いが止まらない。初めて音に触れるバンドでも新たな発見ができるのが、規模を問わずフェスの魅力である。



そのステージで大躍動していたおじさんたちだが、会場入口に設置された Roland のギターとドラムを無我夢中で掻き叩き鳴らし始めたとき、さらにクギヅケになってしまった。何だかこの後ろ姿を見て未来を担う子どもたちもバンドを始めていくのだなと思わずにはいられなかったのだ。クラシックばかりが青少年の健全な育成に不可欠な音楽という固定観念は、もはや通用しなくなってきているのだろう。

ロック…それはあくまでも現在のスタンダードを打破していく新風であり、そのブレークスルーがさらに僕らの生活や地域にツヤやハリを漲らせてくれることを、稲ロックを通じて強く信じていきたいと心を新たにすることができた。稲沢がいち早くカッコイイRock Cityに生まれ変わる日を願うとともに、自分の町にもロックが草の根で拡がり、やがて町の活力源につながっていくといいなという淡い期待を抱いて。

まちづくりとかデカいことは宣言しないまでも、どんなジャンルの音楽でもいい、カテゴリーの分け隔てなくフェスという文化を世代を超えて楽しめる環境があちこちにあれば、特に地域を担う働き盛りの世代にとって生きる希望になる。主催者の中村明浩さんには本誌を通じてお誘いいただき、心から御礼申し上げたい。

ぜひ来年も「稲ロック」に足を運んで、出来れば最初から最後まで見届けたいと思っている。あわよくばヤイリギターへの挑戦権も得させて頂きたい…というのは少々欲張りかもしれないが、今回観れなかったバンド…みならいモンチッチや Senri’s Super Session などの卓越したパフォーマンスに舌鼓ならぬ耳鼓を打ち鳴らし轟かせたい。ちなみに、16時に会場を後にしてから帰宅後、動画配信を観させてもらったが、やはり圧倒的な臨場感と迫力を持つライブ会場を生で体感することを大いにオススメしたい。



路考茶
ろこうちゃ/片田舎の音楽評論家。専攻は「環境と音楽」。中学1年で音楽全般に目覚める(受け専門)。田舎ではどうしてもラップ・レゲエや演歌、歌謡曲しか通じないため、本誌を通して密かにROCKMUSICの雪解けを企んでいる。Twitter ID@my8mountain8hop
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